夏の空は気まぐれだ。


いつのまにか雲が無くなって、明るい月の光が薄暗い店内を包み込む。

外を眺めていたばあちゃんがぽつりと聞いた。


「悠太が何で帰ってきたか分かるかい?」


「――え?」


陸と目を合わす。


「俺らに会いに来たんじゃ……」


ばあちゃんがゆっくりと首を左右に振る。


「ただ会いたいだけで死んだ人は帰ってこないよ。どうしても、伝えたいことがあったんだろうねぇ……」


そう言えば、ばあちゃん……。




――『伝えたいことはちゃんと伝えなさい』



あの言葉は……悠太に向けた言葉だったの?


「伝えたいこと……?」


「でも! 悠太は何も言わないで消え……」


「悠太は本当に消えたのかい?」


「……え? どういう事?」


ばあちゃんが笑い続けるテレビに向かってゆっくり歩きながら言った。


「悠太は……きっとまだこの町にいるよ」