雲の切れ間から覗く月が、坂の上にある古びた駄菓子屋を優しく照らす。

まだシャッターが閉まっていない。



ばあちゃん……。


立て付けの悪い木造の引き戸を、勢いよく開けた。


懐かしい匂いが、鼻の中いっぱいに広がる。

ふたりは溜まったものを吐き出す様に、息も切れ切れに一気に話し出した。


「ばあちゃん!!!」

「悠太の、こと、なんだけど……」



ばあちゃんはこちらに背を向けて座っていた。

テレビの中から聞こえてくる場違いな笑い声が、店の中にこだまする。