生ぬるい潮風が肌に当たってベタベタする。

寝てばかり居たから、走ると横腹が痛い。

それでも、陸の背中を必死で追いかけた。

海沿いまで来た時、前を走っていた陸が速度を緩めて振りむいた。


「……志津! 貸せっ」


陸はそう言うと私の左手を素早く掴んで、腕をぐいぐい引っ張って走り出す。


「貸せって、人の手を物扱いしないでよ!」


陸のスピードに着いていけない。

足がもたついて転びそうになりながら叫んだ。


「お前、遅いっ」


陸に握られた手が暖かかった。


いつの間にかこんなに力強くなってたんだ。

広くなった肩幅……大きくなった手……。

もう泣き虫の陸じゃない。


走る海沿いの道。喉の奥が鉄の味がする。

止まりそうになる足を奮い立たせて、走り続けた。

ばあちゃんが何か知っているかもしれない……。