膝を抱て、ポストの前にしゃがみ込んだ。

だって逢いたい。

幽霊だっていいから、もう一度だけ会いたい。



「悠太ぁ……」


曇った空を見上げて、悠太の名前を呼んでみた。




――まさにその時。


鼻先が柔らかい黄色い光に照らされた。


「え……?」


寄り目がちになりながら鼻先を見ると、1匹の蛍がふわふわと飛んでいた。


「こんな所に……蛍……?」



捕まえようとすると、するりと指の間から逃げて空高く飛び去ってしまった。


「あっ……」


暖かい光が曇った空を優しく包む。

光はどんどん小さくなって、最後には見えなくなってしまった。


ふいに切ない気持ちになる。

いつまでもその光を追いかけるように空を見上げていた。

グレーに染まった雲の隙間から、時々月が顔を出す。