その時、大きなキャリーバックを引いた悠太のおじちゃんが商店街の奥から、駅の方へ向かって歩いてきた。


「おじちゃん……」


後ろには近所の人に支えられたおばちゃんの姿。

両腕を支えられてようやく歩いている状態だ。


「ロンドンに……行くの?」


陸がおじちゃんに駆け寄る。

私達に気が付いたおじちゃんは力なく笑った。


「陸……志津ちゃん……」


そしてかすれた声で呟くように言った。


「あいつ……死んじゃったよ……」


おばちゃんが呻くように嗚咽をもらす。


「じゃあ行ってくるから」


おじちゃん達が私たちの前を通り過ぎる。

私はひとことも声を発することが出来なかった。