「これは夢だ………絶対に」


こんなことがある筈がない。


“さっきまで悠太は一緒にいた”、これだけが私にとっては現実なんだから。


悠太が死んだなんて、ありえない。


「嫌な夢……」


早く起きなきゃ頭がおかしくなりそうだ。

テレビから目を逸らし、もう一度ショーウインドウを殴りつけると、手に鈍い痛みが走った。


「夢なのに……」


さっきまで隣にいた悠太の笑顔が脳裏をかすめる。


「どうして……こんなに痛いんだろう……」


再び振り上げた手を後ろから掴まれた。

陸が大声で怒鳴りつける。


「何してんだよ、志津!」


「離してよ陸、私きっと夢見てるんだ」


「何言ってんだよ、お前……」

「今日の夢は至上最低の悪夢だよ」


「落ち着けよ。何が起きてんのか俺にも分からないけど、今これは間違いなく現実だ」


「そんな訳ないじゃん」


「志津」


「こんなどうしようもない現実があるわけないじゃん!!」


叫んだ声が静まり返った商店街に響く。


「離してよ!」


「落ち着け……って!!」


悠太、早く起こして。

それで夢の話を聞いて「ばっかじゃねぇの」って笑い飛ばしてよ。