「あ……れ……悠太……?」


海岸沿いに1本生えていた向日葵が、私を嘲笑うように風に吹かれていた。

悠太も、ワインレッドの自転車も、そこにはなかった。

1回、ドクンと大きく鼓動が鳴る。


「悠太は……?」


今まで……ここに……居たよ……ね?


その時、弘人の背後から走ってくる陸の姿が見えた。


「弘人……っ!!!」


「陸だ」弘人が呟く。


息を切らしてやって来た陸は、私から弘人に視線を移すと、いつになく強い口調で言った。



「いいから、弘人はとりあえず戻ってろ」