「志津ーっ!!」


遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。

悠太も話すのをやめて声の主がやってくるのを眺めていた。


「志津ーっ!!!!」


振り向くと、商店街の方角から自転車を立ち漕ぎした誰かが、すごいスピードで近づいてくる。

坊主頭……。


「……弘人?」


目を凝らして見ると、Tシャツにジャージという明らかに寝起きの弘人だった。


「弘人だっ!悠太、ほら弘人だよ!!」


久々にふたりが再会するのが嬉しくて、気まずかった事も忘れて悠太に笑いかけた。


「弘人ーっ」


弘人に向かって大きく手を振る。

横では悠太が真顔のままで、急いでやってくる弘人をぼんやりと眺めていた。

もっと喜んでもいいのに。やっぱり、会いたくないのかな……。

急に気まずくなり振っていた手をおろした。


「弘人、元気そうだな……」


悠太が小さく呟いた。