聞こえるのは風と波の音。

悠太は黙々と自転車を漕いでいる。

何を考えてるんだろう。

なんだか恥ずかしくなって、話題を探して無理矢理に話し出す。


「悠太体温低いね。人間クーラーみたいっ」


「なんかそれ褒められてる気しねぇなぁ」


悠太が更にペダルを踏み込んだ。

海岸沿い。

テトラポットがどんどん後ろへ飛んでゆく。


いつまでも、浜辺に着かなければいい……

そしたら、ずっとここに居られるのに。


ずっと悠太の後ろにくっついていられるのに……。


悠太の背中に頬をくっ付けてみる。

ひんやりする背中。私の頬は更に熱くなる。



どうしよう。

私、今どうしようもないくらいに恋してるみたいだ。