薄暗い医務室のカーテンが風で揺れる。

春の風が辛いほどに優しい。

重苦しく時間が流れた。

私も陸も何も言わないでうつむいていた。


その時、私達の間の沈黙を破るように、
「きゃあああ」
という歓喜の叫びが、外から聞こえた。続いて流れてくるブラスバンドの軽快な演奏。




どっちがゴールを決めたかは明らかだった。


うつむいてた陸の肩が、さっきより小刻みに震えている。

時々「うっ……」と嗚咽が聞こえた。


目頭が熱くなる。

陸の頭をぽんぽんと叩いた。

悠太だったらきっとこうするだろうなって思いながら。


「陸……県大会に連れてきてくれて……ありがとう」


小さな声で囁いた。