「私、将来は医者になりたいんだよね」
 

いつだったか、梢子が私に話してくれた。
 
 
うちの町には小さな町立病院がある。そこで町の皆のために働きたいのだと。
 
 
「内緒ねっ」
 
 
照れて顔を真っ赤にして話していた梢子を私はいつもみたいに、からかえなかった。

それどころか、心の底から感心したのを覚えている。

私の夢とは違って、具体的でキラキラしていて未来があると思ったから。
 
私の夢、それは――この町から出ること。ただそれだけ。

 
理由なんて簡単。
 
 
変化のない毎日なんて嫌だ。
 
 
毎日同じ景色を見て、同じ道を歩いて、同じ友達と遊ぶ。

この町にいたら、毎日が同じ事の繰り返しだ。

そんな理由で、私は進学を決めた。