「き、聞いてたの?」


鼓動が早くなる。


もし、陸が聞いていたら……あんな言葉、どれだけ傷つくだろう。

考えただけでも、針で刺される様に胸が痛くなる。

笑いもせずに陸が言った。


「悠太と比べられるのなんか慣れっこだよ」


あきらめた様な顔で、階段の壁を見つめている。


「ばーか。校長に靴投げつけたりして、あんなの本当は停学だぜ」


陸が私の鼻をむぎゅっとつまんだ。

パーカーと同じ石鹸の香りがした。


「帰るか」


そう言うと陸は階段をゆっくりと下り始めた。