「うん、うん。褒めて梢子の可愛さにあやかりたいという志津の気持ちはよく分かるぞ」
 

さも気の毒そうな表情を作って陸が頷く。
 
 
「え! 知らなかった。そういう効果を狙っての褒め殺しだったんだ?」
 
 
陸の横に座っているサッカー部の成田弘人(なりたひろと)が笑いを堪えながらこちらをじっと見つめる。
 
「違うわ! こっち見るな」
 
 
弘人は夏休みに入ってから、髪が邪魔だといって天然パ―マだった髪を剃って坊主にした。
 
保育園からずっとモジャモジャした髪型で過ごしていたくせに何を今更……と思ったのは志津だけではないはずだ。
 
 
サッカー部で坊主はひとりだけなので、グラウンドに居るとやたらと目立つ。
 
 
「それよりあんた達ふたりとも、馬鹿のくせして大学なんか行ってどうするのよ。弘人は大人しく、漁師になればいいのに」
 
 
「俺には大学で可愛い彼女と楽しく講義を受けるっつー立派な目標があんだよ! お前こそ馬鹿なんだから、黙って電器屋継げや!」
 
 
「私、女の子だもん」
 
 
弘人と陸がその言葉を聞いてぶ―っと勢い良く吹き出す。
 
なんて失礼な! すかさず反論しようとしたとき、森先生の注意が飛んできた。
 
 
「ほら、そこの馬鹿3人!! 静かにせんかっ。プリント配るぞ―」
 
 
周りがどっと笑う。
 
一括りにされたバカ3人は、相変わらず小声で「お前が一番馬鹿だ」とmost馬鹿の称号を押し付け合っていた。