高校は山の頂上にある。

だから学校に行く時には、
この恐ろしく長い石段を
登らなくてはならない。
 
 
「誰だよ、こんな所に学校建てようとか言い出したバカは……」
 
 
毎朝1回は誰もが呟く言葉を、私もまた、今呟いた。
  
高校に入って今年で
3年目だというのに、
いまだにこの石段とは仲良くなれない。
 
この石段を好んでいるのなんて、
陸を始めとする運動部の一部の連中だけだ。
 
 
「朝練前のウォ―ミングアップに丁度いい」
だなんて、本当にドMなんじゃないかと
神経を疑ってしまう。
 
 
「おせぇな。今日の1限は……うっわ! 古典かー。また森先生に怒られるわ。志津のせいだかんなー!!!」
 
 
石段の一番上に腰を下ろした陸が、
生徒手帳に挟んだ
時間割を見ながら嘆く。
 
 
「文句言うなら先行けや……」
 
 
私は水気をなくした口で、
小さな悪態をついた。
 
 
陸の文句がポ―ズなことなんて誰にだって分かる。
 

少しでも講習をサボりたい、だから奴はこうして毎朝、私を遅刻の口実に使う。