【世界最強のゴーレムマスターバブ】~前世、親に恵まれなかった僕、異世界に転生したら優しい家族に囲まれて幸せなので恩返ししたい~

 創造するのは、今までに一番創ってきた通常ゴーレムだ。

 でも、今回はフィギュアサイズではない。僕はいつもより魔力を使って創造し、ゴーレムは本来のスペックを取り戻す。

「ンゴゴゴゴオオオオオオオ!」

 果たして、ゴーレムは盛大に産声を上げてこの世界に創造された。

 ……と、思う。

 幌が邪魔で僕からだとゴーレムの雄姿が見られないんだよね。

 そんな場合じゃないというのはわかるけど、かなり残念だ。

「ていたー!」

 ゴーレム、発進!

 ドスン、ドスンと幌馬車の向こうから重量物が移動を開始する音が聞こえてきた。

 でも、やっぱり僕もゴーレムが見たかったなぁ。

 そう思った時だった。

「おう?」

 まるで脳内に画面ができたような感覚。そこに映るのは、ズシン、ズシンという足音と共に揺れる視界だった。その画面には、御者のおじさんが二体の豚頭のモンスターに襲われている姿が見える。よく見れば、ゴブリンも六体くらいいるみたいだ。

 御者のおじさんは幌馬車を守ろうとしているみたいだけど、数の暴力にズルズルと下がることを余儀なくされているらしい。

 まずはここに加勢しよう。

 僕はゴーレムに指示しようとして気が付いた。

 もしかして、ゴーレムを操れる……?

 ゴーレムは僕自身が操ることもできるし、ゴーレム自身が僕の指示に従って動くオートモードがあるみたいだ。

 僕は咄嗟にゴーレムを自分で動かすことに決める。

 でも、どうやって操縦するんだろう?

 試しに前進と命じてみると、ゴーレムはズシン、ズシンと歩き出す。

「ていあー!」

 そして、御者のおじさんが戦っている前線に到着すると、少し低い位置にあった豚頭のモンスターに右ストレートを喰らわせる。

 すると、まるで爆発するように弾ける豚頭。

 ゴーレム強い! やったー!

 でも、ちょっとグロい光景だなぁ。生で見てなくてよかった。

 その時、ドンッとまるでカメラが揺れるような衝撃が走った。

 見れば、残った一体の豚頭が棍棒をゴーレムのお腹に突き刺していた。

 でも、そんな攻撃じゃ僕のゴーレムは倒せないぞ!

「へあー!」

 驚愕したような表情を浮かべる豚頭に、左のストレート。

 まるで叩き潰されたスイカのように爆発する二体目の豚頭。

 これで豚頭は排除できたね。

 あとは残っているゴブリンを踏み潰して終わりだ。

 御者のおじさんがポカンとした顔でこちらを見上げているのがわかった。

 まぁ、おじさんから見れば、いきなり現れた謎のゴーレムだからね。敵か味方かもわからないだろう。

 それを象徴するかのように、お父さんが大剣を担いでこちらに向かって走ってきた。

 ゴーレムに向かって剣を構えたお父さんとおじさんが話し合っているけど、僕はまだこの世界の言葉を理解していないので何を言っているのかはわからない。

 ここでお父さんたちと戦闘になっても困るし、ゴーレムは解除しておこう。

 僕がゴーレムから魔力を抜き取ると、プツンと脳内の画面が消えた。

 そして、幌馬車の外からガラガラと何かが崩れ落ちるような音が聞こえてきた。たぶん、魔力のなくなったゴーレムが崩れた音だろう。

 その時、幌馬車の外からお父さんの声が聞こえた。

 お母さんが返事をし、僕を抱いたまま幌馬車の外に出た。

「あひー」

 久しぶりに吸う外の空気は、ちょっと獣臭い気がした。

 お母さんは、片手に杖、もう片手で僕を抱いて、お父さんとおじさんの所へ急ぐ。

 そこには、豚頭の持っていた棍棒が突き刺さった大きな土の山があった。たぶん、僕が創ったゴーレムの成れの果てだろう。

 その前では、お父さんとおじさんが険しい顔をして立っていた。二人ともゴブリンに殴られたのか、あちこちに痣のようなものができている。

 そんな二人の後ろには、顔を失った豚頭の死体が二つと、踏み潰されたゴブリンが地面の染みになっていた。

 お母さんは二人に近づくと、何事かを唱える。

 すると、薄い緑色の光の粒子がお父さんとおじさんの二人を包み込んだ。

 光の粒子が消えると、二人にあった痣や怪我などがなくなっている。

「おぉお!」

 すごい! これってもしかして、回復魔法というやつだろうか?

 でも、『ガード・ゴーレム』には回復魔法なんて登場しなかったな……。

 ここはもしかして、魔法は存在するけど、『ガード・ゴーレム』の世界じゃない……?

 だとしたら、どうして僕はゴーレムを創れるのだろう?

 不思議だ。

 そんな僕を見ながら、三人が真剣に話し合っているみたいだ。

 でも、まだ言葉がわからない僕には、三人が何を話しているのかがわからない。

 うぅーん……。早くこの世界の言葉を覚えないとなぁ。おしゃべりはまだできないだろうけど、何を言っているのかかなり気になるよ。

 しばらくして結論が出たのか、三人は再び幌馬車に乗ると、今まで通り草原地帯を幌馬車で進み始める。

 ゴブリンに何度か矢を撃たれていたみたいだけど、馬には当たらなくてラッキーだったね。