【世界最強のゴーレムマスターバブ】~前世、親に恵まれなかった僕、異世界に転生したら優しい家族に囲まれて幸せなので恩返ししたい~

「こっちはいい! サムは馬車の護衛だ!」
「了解です!」

 オレ、アドルフ・ランドールは、護衛に連れて来たサムに指示を出すと、ゴブリンたちに斬り込んでいく。

 ゴブリンたちはそんなに強いモンスターじゃない。これくらいなら楽勝だ。

 一気に二匹のゴブリンの首を刎ねると、ゴブリンたちが動揺したように動きを止めた。

 この隙を見逃すオレじゃない。

 さらに一匹のゴブリンの首を刎ねる。

 これで退いてくれるならいいが……。

 しかし、ゴブリンたちは退かない。棍棒を振り上げて襲いかかってくる。

 その時、視界の端で森から飛び出してくるゴブリンの一隊を見た。

 どうやら、ゴブリンたちは二つの隊に分かれて襲撃を企てていたようだ。しかも。あちらが本命なのか、十匹以上いるように見えた。ゴブリンらしくない頭脳戦。いや、ゴブリンらしい悪知恵を働かせている。

 だが、馬車の守りにはサムを置いてきた。サムならば、時間はかかるだろうが、安定してゴブリンぐらい殲滅することができるだろう。

「な⁉」

 しかし、オレの予想は外れることになる。

 ゴブリンアーチャーだ。二匹のゴブリンが、粗末な作りの矢で幌馬車を攻撃している。

 サムはなんとか盾を使って幌馬車への矢を防いだが、そんな曲芸が何度も成功するわけがない。

「奥方様! 伏せていてください!」

 サムがそう叫ぶと、一気にゴブリンとの距離を詰めていく。

 早くあのゴブリンアーチャーを始末しなければならない。矢がセシリアやクラークに当たれば最悪、死亡もあり得るし、馬に当たれば馬を失うかもしれない。

 どうにかしなくては!

 しかし、オレの目の前には残り四匹のゴブリン。

 サムの行く手を阻むように、ゴブリンたちが十体以上待ち構えている。

 すぐにゴブリンアーチャーを倒すのは無理だ。

「はあああああああああああああッ!」

 焦る気持ち。それに押されるようにして、オレは強引にゴブリンの首を刎ねる。

 おかげでゴブリンの棍棒を胴体に喰らったが、鎧を着ているオレのダメージは軽微だ。

 早く目の前のゴブリンを倒さなければ……!

 残り三匹になったゴブリン。

 オレは一気に決着を付けるべく強引に倒そうとした。

 その瞬間――――ッ⁉

 目の前に迫るまるで丸太のような大きさの棍棒。

「うおッ⁉」

 オレは辛うじて身を投げ出すようにして飛んで回避する。

 ロクに受け身もできないほどの急な動き。おかげで右の足首をひねって痛みが走る。

 だが、問題はそこじゃない。

 あの丸太の攻撃。その犯人は――――!

「オーク……!」

 オレよりも頭一つは大きい豚頭の巨人。オーク!

 その分厚い脂肪に弛んだ体からは想像できないほどの怪力を持っているモンスターだ。

 オークもオレにとっては大した脅威ではない。

 だが、今は少しでも時間が惜しいという時にこれは厳しいものがあった。

 見れば、サムの方にもオークが二体出ている。

 たしかに、オークとゴブリンの間には奇妙な共生関係があるのは知られている。だが、どうしてこんな所にこんな規模のモンスターの大群が現れるんだ!

 二体のオークの相手にサムも苦しそうだ。

 そんなサムを無視して、ゴブリンアーチャーが幌馬車の幌に次々に矢を撃ち込んでいく。

 セシリアは治癒魔法を使えるが、それだって限界がある。

 オーク二体、複数のゴブリンの圧力に押されて、サムがずるずると幌馬車の方へと下がっていく。

 このままではセシリアとクラークが危ない!

「くそっ!」

 そんな時だった。

「なんだありゃあああああああ⁉」

 幌馬車の隣でゴゴゴゴゴゴッと土煙を上げながら何かが出現した。

 それは、どことなく間抜けな顔をした土の塊だった。


 ◇


 僕は大慌てだった。

 お父さんも御者をしていたおじさんも出て行ってしまい、僕はお母さんに抱えられて幌馬車の中の荷物の影に伏せていた。

 幌馬車の外の状況はわからないけど、だんだん獣の鳴き声のようなものが近づいてきている気がする。

 ズボズボッと幌を突き破って飛んでくる矢の数はどんどん増えている。

 もしかして、劣勢なのだろうか?

 僕の頭の中で、なんとなく広がる画面があった。それは、『ガード・ヒーロー』のゲーム画面だ。

 『ガード・ヒーロー』はタワーディフェンスゲームだった。この場合、お父さんとおじさんがこちらの出撃ユニットで、僕たちがいるこの幌馬車が襲われたら負けである。

 お父さんとおじさんで劣勢ならば、出撃ユニットを増やせばいい!

「てい!」

 僕は手のひらに魔力を集めると、できた砂を幌馬車の床の隙間から外に流し込む。砂は風に乗って幌馬車の後方へと流れて行った。

 僕は目を閉じて意識を集中する。

 すると、撒かれた砂の一粒一粒の位置や状態を把握することができた。

 これなら!

「ちゃ!」

 僕は、撒いた土を通して周囲の土を魔力で巻き込んでいく。

 ゴゴゴゴゴゴッと地響きが鳴り響き、ガタガタと幌馬車が揺れ出す。

 お母さんが悲鳴をあげて、僕をギュッと抱きしめた。