香りは愛を隠せない―月見草の香る後宮で―


 
第四章
 貴人たちが去り、庭園の片付けがはじまった。
 涼風も本来ならば、たくさんの仕事があるのだがどうしても東宮のことが気になって仕方ない。
 とりあえず霧島様を探そう。
 涼風は東宮付の女官ではあるが、軽々しく東宮に話しかけられない。現在どこにいるのかも把握できていないので霧島を頼るのが一番早い。
「涼風、東宮様のお部屋に香の準備をして」
 そう思っていた矢先、ちょうど霧島から声をかけられた。偶然にも東宮の部屋に行けることになったので、様子がうかがえるかもしれない。
 そのまま東宮の部屋に向かおうと思っていたけれど、思い立って香の作業部屋に寄ってから向かうことにした。
 部屋の中が真っ暗だ。普段ならろうそくの明かりがついているはずなのにどうしたのだろうかと、不思議に思いながら声をかけた。
「失礼いたします。香をお持ちしました」
 御簾の中に視線を移した涼風は、驚いて香の乗った盆を落としそうになった。
「と、東宮様。大丈夫ですか⁉」
 焦って御簾を跳ね上げて中に入る。本来なら不敬にあたるかもしれないが緊急事態だ。御簾の中では東宮が脇息(きょうそく)にもたれかかり、苦しそうに額を押さえていた。
「騒ぐな、よくあることだ」
「でも……とりあえず灯りだけでもつけます」
「だめだっ!」
 大きな声にビクッと体が跳ねた。いつも冷静で皮肉を言うことがあっても、こんな大きな声を発することはなかったからだ。
「火は……火は点けないでくれ」
 もしかして、火が怖いの?
 切実な声色にただことではないと判断し、言う通りにした。
 あらためて東宮の様子を見ると、脂汗が額に浮かんでいる。きっとずっと調子が悪かったのだが、人の目がなくなったことで倒れてしまったのだろう。
「どこが痛いのですか? どうすればいいですか?」
「大丈夫だ、少し経てば治る」
 そうは言うけれどすごく苦しそうだ。その様子を見てやっと気が付いた。
「香を焚いてもいいですか?」
「あぁ、頼む」
 涼風が急いで持ってきた香炉に香を入れた。しばらくすると香りが漂いはじめる。
 東宮の好きな香りに加え、体の緊張をほぐす成分の入ったものを準備してきてよかった。効き目があればいいと思いながら、他に何かできるか考える。
 そして小さな頃、宵によくやっていたことを思い出した。
「殿下、お体に触れてよろしいですか?」
「……っ、どういうことだ?」
「変な意味ではないのです。ただ手を少しお借りしていいですか?」
 涼風の言葉に東宮は素直に右手を差しだした。
 彼の手を握るとゆっくりと優しくもみほぐしていく。小さな頃、宵の体調が悪い時によくやっていたのだ。
 固くこわばっていた手をもみほぐすことで、徐々に緊張がとけてきた。東宮の呼吸が落ち着いてきて少しは効果があったのだと思えた。
「気持ちがいいな」
「よかったです。これよく妹にしてあげていたんです」
「そうか……きっと妹も喜んだんだろうな」
「そうだといいんですけど、もう確かめるすべがなくて」
 宵の記憶は八年前で止まっている。もし生きていればどんなふうになっているだろうか。
「もし会えるなら、会いたいか?」
「もちろんです。大切な妹なので。あ、そうだ。殿下からは妹と同じような匂いがします」
 思わず口にしてしまってから、不敬だったかもと慌てる。
「し、失礼なことをいいました。妹は私にとって特別なので」
「かまわない」
 手をもみほぐしていると、ふと気が付いた親指の付け根のところに四角い黒子がることを。
……こんな偶然ある?
 たしか宵にも同じところに黒子があった。匂いといい黒子といいどうしてこんな共通点があるのだ。
 他の大部分がまったく合致しないので、別人だとわかっている。そもそも東宮は男性で、宵は女性だ。それに身分だって違う。
 そう考えるのに宵と共通の箇所を見つけると思わずうれしくなってしまう。
「黒子の位置まで一緒なんて。こんな偶然あるんですね。殿下が妹と同じなわけないのに」
「もし、私がその妹だと言えばどう思う? すずお姉ちゃん」
 体に衝撃が走った。
 目を見開きじっと東宮の様子を見る。体も思考も停止してしまったのか見つめるしかできない。
 涼風を「すずお姉ちゃん」と呼んだ彼は、口元にいたずらめいた笑みを浮かべている。
 おもしろがっている……?
 何がなんだかわからず混乱して、上手く考えがまとまらない。
 白檀と月見草の匂い。それに親指の付け根の黒子。
 東宮と宵の共通点はこれだけだ。身分もそもそも男女の別も違う。宵は村の大火事のときに亡くなってしまったのだ。もう二度と会えないのだと、何度も涙した。
 目の前の完璧に整った要望を持ち、人を寄せ付けないその人がまさか宵だと言うの?
 こんなこと想像するほうがおかしい。わかっている、わかっているけれど。
「ど、どうしてその呼び方……を?」
 涼風をそう呼ぶのはこの世で宵ひとりだけだ。そしてそのことを知っている人はほんの数人だけだ。
 指先の震えが止まらない。体中から汗がにじんでくる。
 涼風は自分の中で浮かんできたひとつの可能性を目の前の人物にぶつける。
「宵、もしかして……生まれ変わったの?」
 にわかに信じられないが、昔物語でそういう話があるのを聞いたことがある。竹から姫が生まれるという話もあるくらいだ。宵が東宮に生まれかわることもあるかもしれない。
 真剣なまなざしで東宮を見つめる。彼のどんな変化も見逃さないつもりだ。
 しかしまっすぐな視線を向ける涼風と違って、東宮はさも楽しそうに声を上げて笑った。
「ははは、生まれ変わりか。それもいいな」
 いつもの冷たい雰囲気は霧散して、目を細めて笑っている。
「す、すみません」
 自分が荒唐無稽なことを言っているということを自覚して恥ずかしくなって目を逸らした。
 失礼なことを口にしてしまい、変な汗が噴き出してきた。
「もし私が生まれ変わったと言えば、そなたはどうするつもりなのだ」
「ど、どうするって……」
 ずっと会いたいと思っていた、守りたいと思っていたのに守り切れなかった大切な妹。魂だけでも今ここにあるのだ。そう思った途端。
 涙がボロボロと頬を伝って流れた。
 その様子を見た東宮が焦った様子で身に着けている高級な単(ひとえ)で、その涙をごしごしと拭った。
「泣かないで、そんな顔を見たくないよ、すず姉ちゃん」
「ほ、本当に……なの? う、生まれ変わったの?」
 身分だなんだそんなことはもうどうでもよかった。いつもよりも近くにいるせいか白檀と月見草のふたりだけの特別な香りが濃くなる。
「生まれ変わりでも、この香り受け継ぐんですね」
 体の中にしみこんでいるのだと思っていた。しかし魂にも残っているなんて。
「ははは、まさかそんなことあるはずないだろう」
「え?」
「生まれ変わったわけじゃない。私は宵だ」
 きっぱりと言い切った。
「ですから……宵の生まれ変わりですよね?」
「違う、宵なんだ」
 理解できずに、首を傾げる。
「その顔もなつかしいな」
 東宮が手を伸ばし、涼風を抱きしめた。理解が追い付かない彼女はされるがままだ。
「あぁ、すず姉ちゃんの匂いだ」
 その囁きは、声は違うけれど宵そのもので……。
「ちょ、ちょっと待ってください。生まれ変わりじゃないならどういうことですか?」
 全く理解できないまま、抱きしめられている今の状況を理解できない。
「だから私はずっと宵だ。すず姉ちゃんが妹だと思っていたのは実は弟で、親王――天皇の甥の煌月だということだ」
 宵が男で皇族だっていうこと? 生まれ変わりじゃなくて? そもそも生きていたの?
 ああ、どういうことか全く理解できない。パニックになった涼風はその場で目を回して倒れてしまった。
 
 頬に冷たい何かが当てられた感覚で目覚めた。
「大丈夫か?」
 目の前に東宮の顔があって驚き勢いで体を起こして、東宮の顎に頭をぶつけてしまった。
「も、も、申し訳ございません」
 すぐに膝をついて深々と頭を下げる。
「そんなにかしこまらなくていい。霧島に人払いをさせているから」
「いえ、あの。私」
「ちょっと、落ち着こうか。息を深く吸って」
 背中をぽんぽんと優しくなでられて、深呼吸した。
「昔はすず姉ちゃんにこうやってもらっていた。覚えている?」
 そうだ。昔は看病していたのは涼風だった。共通の記憶を持っている。
「本当に宵なの?」
「そうだ。私は正真正銘、君の宵だ」
 理解は追い付かないけれど、目の前にある事実のひとつひとつが彼が宵だと裏付けている。炎を扱う祭事の間からずっと様子がおかしかったのもわかる。おそらくあの大火事が心に傷になったのだろう。
「どうしてこんなことが?」
 そこで宵がここで東宮として暮らすことになった経緯を話した。
 煌月が生まれた頃、天皇家では熾烈な皇位争いが行われていた。現在の天皇が即位するまでは後宮では血で血を洗う戦いが繰り広げられていた。婚家も巻き込み政治に大きな影響を与え、政局は混乱をきたしていた。
 天皇の妹であった煌月の母は、その争いから息子を守るべく出産後すぐに煌月を下女の千草に託して死産として届け出た。
 煌月は女児だと偽り、玄秋の千草の娘として育てられた。
 多少体は弱かったけれど、平民の子として元気に育った。しかしあの村が大火事に見舞われる一年前あたりから、村に見知らぬものが出入りし始めた。
 玄秋と千草が警戒を強め、新しい土地への移住を検討していた矢先あの大火事に見舞われたのだ。
 あの火事の最中に皇族のものに保護され、ふたたび政治の真ん中に連れ戻されることになったのだ。
「まさか……そんなことがあっただなんて。でもよかった……生きていてくれた」
 涼風はもう会えないと思っていた宵と会えたことが何よりもうれしく手を取った。しかしその手の大きさにドキッとしてすぐに手を放した。
「今の宵は、私の知っている宵じゃないんだね」
 そう、もう宵という娘はこの世に存在しない。そのかわりに東宮、煌月が目のまえにン在しているのだ。 
 もう気軽に触れあえる関係ではないのだ。こうして再会したことを喜ぶべきなのに、変わってしまった関係を寂しく思う。
「何を言っているんだ。私は宵だ、そうだろう。すず姉ちゃん」
 肩を掴まれて言い聞かせるように揺すられた。しかし涼風も知っている、ふたりの間には越えられない身分の差がある。
「ダメだよ。宵はもう東宮なんだから」
 涼風の代わりはたくさんいるけれど、彼の代わりになれる人はいない。
「すず姉ちゃんが言いたいことはわかる。私の近くにいれば危険が伴うことも。あの村だって私がいなければ火事になることもなかった」
 眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をする煌月を見て、彼がこれまでかかえてきた苦労が想像できた。
 そして彼は小さな体でここに連れてこられ、急に親王だと言われ孤独に耐えていたに違いない。どれほどの苦悩をかかえてこれまで過ごしてきたのか。
 今の立派な姿からそれを想像する人はいないだろう。
「それでもすず姉ちゃんには側にいてほしい。それが私に許される唯一のわがままだから。だから私にそんな冷たい態度はとらないでほしい」
 どうしていきなり典薬寮から東宮付きの女官になったのかわからなかったけれど、彼はとっくに涼風のことに気が付いていたのだ。
「すず姉ちゃん。ずっと守ってくれると約束したのはうそだったの?」
 立派な東宮である煌月なのに、今の仕草は昔の宵を彷彿させる。そうされると強くでられない。
「うそじゃない。だけど……」
 どうしたらいいのか悩んでいると、嫌な匂いが鼻をついた。
「宵、この香を吸わないで」
 涼風は袖で煌月の口元を覆う。彼が自分で押さえるのを確認して胸元に隠していた口元 を薄布で覆う。典薬寮で働いていたときのくせで常備していてよかった。
 そのまま花瓶の中の水を急いで香炉にかけた。
 中身を確認すると香と一緒に薬草が入っている。
「これは、私が準備したものじゃない」
 手に取って匂いを嗅ぐ。
「これは……睡眠薬? どうして……」
 煌月は難しい顔をして何かを考えている。
「涼風、ちょっと芝居につき合う気はないか?」
「へ?」
 煌月はなにか悪だくみするような顔をした後、涼風の耳元に唇を寄せて昔いたずらの作戦会議をするかのように楽しそうに囁いた。

 夜半過ぎ……。
 東宮の部屋の近くの廊下が軋む音が聞こえる。東宮殿は人払いをされていてほとんどひとけがなかった。宿直の役人も今は出払っているのか近付いて来る人に警戒するものはいない。
 ろうそくの灯りが近付いてくる。
 様子を伺うように御簾がゆっくりとまくられる。そこには煌月と涼風が手を繋いで眠っていた。
「ふふふ、幸せな夢を見ている間に黄泉路におくって差し上げます」
 凶悪な笑みを浮かべた、老女が短刀を持った細い腕を思い切り振り降ろそうとした。
 その瞬間煌月の目がカッと大きく開いた。
 驚いた老女が驚いて短刀を落とした。そしてそれを涼風が広い遠くに逃げる。
「ど、どうして……霧島様がっ!」
 涼風はそこにいる人物を見て、驚きで声を上げた。想像もしていなかった人物が煌月襲うのを見て衝撃を隠しきれない。
 ばたばたと宿直が来て、霧島を捕まえた。
 捕らえられた霧島を煌月は寂しそうに見つめている。
「あぁ、どうして大人しく殺されてくれなかったのですか、どうして……どうして」
 泣き叫んでいて理由はわからないが、声にならない慟哭が部屋の中に響いた。
 引きずられていく霧島を涼風はただ茫然と見ているしかできなかった。
 煌月はそんな霧島を見つめて彼女が部屋から引きずり出された瞬間に口を開いた。
「霧島、世話になったな」
 短いその言葉が霧島にとどいたとき、より一層彼女の泣き声が大きくなった。

 半月後、霧島の処刑が行われたその日はとても晴れやかな日だった。
 霧島は天皇の后のひとりの乳母だった。現在皇女様を生んでいる。お子様はひとりなのでこのままであれば彼女が天皇になる。しかし現在の東宮である煌月は臣下からの信頼も厚くこのままであれば、次期天皇となるのは間違いない。
 早いうちに排除しておき、皇女様を支える臣下を獲たかったという理由を述べた。
 妃はこのたくらみに加担していないと判断されたが、一年ほど離れに幽閉されることになった。実家も処分が下された。皇女様のことを思っての事だったはずが、結局のところ足を引っ張る形になった。
 涼風は部屋で調香しながら、政の虚しさを感じてやるせない気持ちになった。
 霧島は厳しかったけれど、理不尽な人ではなかったし、妃も涼風の香を気に入って喜んでくれていた。いい人だと思っていたのに、こんな形で敵になるなんて。
 後宮や内裏に渦巻く人間関係の怖さをあらためて知ることになり、物悲しくなる。
「すず姉ちゃん、どうかした?」
「え、で、殿下。どうしてこんな時間にこんなところへ?」
 お付きもつけずにふらふらと部屋の中に入ってきた。どういうことだ。
「こんな時間じゃないと、ゆっくり話ができないから」
 煌月は懐から菓子を取り出し、涼風の口元に運んだ。最近はこうやってよく餌付けにやってくるのだ。
 涼風は香炉でふたりの香である白檀と月見草の香を炊く。
 すると少し距離が縮まるような気がするからだ。
「殿下はーー」
「この香を炊いている間は、宵と呼ぶ約束だ」
「はい。宵は霧島様のことをどうお思いですか」
 処分が下された今日がいいタイミングだと思い尋ねる。
「残念な人だった。私にもよく仕えてくれたからね。でもこの内裏では自分の意思など無視されることがほとんどだから。それは東宮である私でもだ」
 立場が上になったところで、すべてが思い通りになるわけではないと言う。
「そうですね」
「すず姉ちゃん、息苦しい世界だと思う?」
「そう……ですね」
 宵と呼ぶ今でもやはり敬語を辞めることができない。
「私が東宮である以上、あの頃には戻れない。だが――」
 そこで煌月がまっすぐに涼風を見た。
「私は昔した約束を守ってもらうつもりでいる」
 宵とはたくさんの約束をしてきた。どのことだろう。
「どの約束?」
 今となっては守れない約束も多い。
「ずっと一緒にいるという約束だ」
「……それは、あの村で姉妹としてした約束だから。今は無理でしょう」
 何度も感じたふたりの間にある壁。今はまだこうやって会えるが、いずれそれも難しくなるだろう。
「今は無理でも、これから先はわからない。私はいつまでも〝すずお姉ちゃん〟のままでいさせるつもりはない」
 どういう意味か理解できずに首をかしげる。
「本当に年上なのか心配になるほど鈍いね」
 煌月が涼風の鼻の頭をつついた。
「涼風、いずれは私の隣に堂々と立ってもらうつもりだ」
「それって……あの、え?」
「もうきょうだいではいたくない。私はそなたを女として見ている」
 突然の告白に急激に顔に熱が集まるのを感じた。途端に鼻先をくすぐる香とは違う甘い匂いに気が付いた。
「涼風、もう気が付いたよね。私の匂いが変わったのを」
 顔を赤くした涼風は、何度も頷いた。これは……ちょっと濃密で大人の香りだ。涼風にとっては煌月の態度や言葉よりも匂いの方が強烈な印象を与える。
 ドキドキと心臓が破裂しそうだ。これまでも大人になった宵に戸惑うことがたくさんあった。しかし今ほど男を意識したことはない。
 戸惑う涼風をよそに、煌月は距離を縮めた。そして涼風の顎に手をかけ視線を合わせる。
「今度は私が涼風を守る。必ずその力を手に入れる。だからちゃんと側でみまもっていてほしい」
 内裏や後宮は怖いところだ。いまだってやるせない気持ちがいっぱいだ。
 でもここで自分の大切な人をひとりで戦わせるようなことはしたくない。
 涼風は決意を固めて、からしっかりと頷いた。
「そばにいるって約束したもの」
 失った五年間、自分を責めた。いま宵が生きているとわかったのならそばで支えたい。そして心の中での変化にも気が付いている。
 宵を守りたいと思っていた五年前と違い、側で支えたいと思うようになった。
 まだ煌月としての宵に戸惑うことも多いけれど、それ以外の選択肢が涼風の中にはないのだ。
「また新しい約束だな、涼風」
 低く甘い声で名前を呼ばれると、胸の中がくすぐったい。
 ここからまたふたりの新しい関係が始まる。
 肩を抱かれ身を任せると、ふたりだけの香りである白檀と月見草がより豊かな香りを醸し出したような気がした。

END