ふたりで奏でるtutti

『Allegro』イタリア語では本来「陽気な・快活な」という意味である。単なる速さだけでなく、明るく弾むような性格もあわせて表す。


入学して2週間。少しクラスにも馴染んできた時期だ。今日からなんと各部活動の仮入部期間に入る。事前に部活動紹介があった。盛り上げて人を集める部活、実績を話して人を集める部活、様々だったがやはり吹奏楽部の演奏に心を惹かれた。最近流行りのJPOP曲だろう。耳にしたことのあるメロディを数人で演奏していた。数人だとは思えないほど迫力のある演奏だった。
放課後、同じクラスで中学から仲の良い友人、相原奏を誘い吹奏楽部の活動場所である音楽室へ足を運んだ。
「お前が吹奏楽部に興味持つなんて意外だな。中学の音楽の成績言ってみ?ギリの3だったろ。そんなお前がな〜。」
「うるさい」
いつどこで入手したのか分からない成績は一旦聞き流し靴を脱ぎ音楽室へ入る。
中には簡単に客席としてパイプ椅子が置かれてあったのでいちばん近い席に腰掛ける。ふと前を見るとこちら側に向かって先輩達が楽器を持ち座っていた。こんな近くで聞けるのか。
「今日来てくれる新入生は揃いましたか?名前確認します。A組、、、。」
今日来る1年生の名前が書かれているのであろう紙を見ながら部長らしき人が話し出す。
「全員いますね。それでは青嵐高校吹奏楽部仮入部を始めさせていただいます。まず初めに私たち2、3年生より歓迎演奏をしたいと思います。」
先輩が座ると演奏が始まる。
仮入部とは違うがこれも同じく最近の流行りのJPOPだろう。
イケメンなアイドルたちが様々な番組やSNSで踊っているのを目にしたことが何度かある。
途中静かな曲調になり1人の先輩がその場に立ち演奏を始めた。
その先輩はいちばん楽しそうに、そしていちばんかっこよく演奏をしていた。キラキラとした音色につい心を奪われてしまう。
先輩のSoloが終わる。周りと同じように拍手をし、あっという間に演奏は終わった。
どの曲もかっこよかった。
「それでは次に気になった楽器の先輩と一緒に楽器体験を行ってください。各パート1人はその場に残り1年生を誘導してください。まず、フルートをしたいと思った人〜」
順に楽器が呼ばれる。
「お前どうする?俺ドラムかな〜やっぱかっこいいじゃん。」
「僕はあの、トランペット?にしよっかな。」
「意外〜。」
トランペットが呼ばれさっきSoloを吹いていた先輩と共に3-Cの教室へ向かう。
「トランペットはここね〜!」
扉を開け中に入るとニコニコな先輩たちが優しく迎えてくれた。
「トランペットにはふたり来てくれました!!自己紹介していこうか。俺は久遠琉唯です。このトランペットパートのパートリーダーしてます!よろしくね。」
久遠先輩か、 。
その後も残りの先輩たちが自己紹介をしてくれた。どの先輩も明るく接してくれてとても話しやすい。
「次、1年生行こっか。まず右の子から。」
「えっと、1年C組の一ノ瀬天音です。入学式の演奏で興味を持ちました。よろしくお願いします。」
「よろしくねー!!」
久遠先輩は明るく場を盛り上げてくれた。
少しの質問タイムを挟み、ついに楽器体験に移った。
トランペットはマウスピースという部分に口をつけ、唇を震わせて音を出すのだそう。
どのような仕組みなのか全く理解できないが、見よう見まねでマウスピースを口につけてみる。
「ブーッ」
空気が口から抜ける音しかならない。先輩の方を見ると綺麗な音が鳴っている。なぜだ。
「難しいよね、コツはね〜。」
久遠先輩が優しく教えてくれた。
なんとか鳴るようになったので次は楽器を組みたててもらい吹くことになった。
吹き方のコツを掴めたからか楽器をつけてからはすんなりと音が鳴った。だがやはり久遠先輩の演奏には程遠い。先輩はすごいなぁ。
「一ノ瀬くん音出たの!?すご!」
お世辞か本心か、前者だろうが大袈裟なほど褒めていただき、調子に乗りかけてしまう。
30分ほど体験させていただき、帰宅時間となった。
帰り際、
「今日はありがとうね!ぜひ吹奏楽部へ!!一ノ瀬くん才能あるよ」
と、久遠先輩から伝えていただき、嬉しくなった。
帰り道、
「一ノ瀬どした?なんか嬉しそう。なんかあった?」
「内緒」
つまんねーの、教えろよーなんて言う相原をよそに空を見上げる。
茜色になる空を見ながら、さっきの出来事は内緒にしようと心に決めた。