いつも塩対応だった義弟の溺愛スイッチを押してしまったようです

 篠田の発言に、味方を得た戸館は目を輝かせる。

「なあ、そう思うよな!」

 篠田は薄笑いを浮かべながら両腕を組んだ。

「マジで無いのはあんただよ。最悪なのは、戸館、あんた。あー、だっさ」
「はあ!?」
「あんたさ、本ッ当に馬鹿だね。人の気持ちとか考えたことないでしょ」
「おまえに言われたくねえよ!」
「まあね。あたしもたいがい性格悪い自覚あるけどさ」

 思いがけない展開に、俺も周囲も口を挟めず、彼らを見守るしかない。
 この二人、性格に難がある者同士で一番気が合うように見えたのに、仲違いしちゃうんだ。

「あのさ、あたしの幼馴染、女の子で、恋愛対象も女の子なんだけどさ。その子が大事な幼馴染なのは、あたしの中でずっと変わんない訳よ」

 戸館を睨みつけながら、篠田が一歩、二歩と前に出た。

「あたしはいつも、あたしの幼馴染を馬鹿にする奴がいたら、ぶん殴ってやろうと思ってる」

 ああ、男同士なんてキモいって言ったもんな、戸館。
 その発言が篠田の逆鱗に触れたんだ。
 篠田に近づかれた分、戸館はみっともなく後ずさる。
 おい、気迫でもう負けてるじゃん……。
 進み出た篠田は、そのまま戸館のところじゃなく、人垣の陰にいた笹村さんの傍で立ち止まった。距離を取ろうとする笹村さんに、篠田は決まり悪そうな顔を向けた。

「こないだは……変なやり方しか出来なくてごめんね。でもさ、あの本は学校に持ってくるのはやめて、家とか別の場所で読んだ方がいいと思う。ああいうの苦手な人間もいるんだからさ。自分の好きが、みんなも好きとは限らないんだから、配慮は必要でしょ。得意げに学校でエロ本読んでるどっかのバカと同じにされるのは嫌じゃん?」
 
 一気にそう告げると、篠田は再び横目で戸館を見据えた。

「あたし、普通にBL好きだし。人の好きなもの、てめえの価値観で貶すんじぇねえよ」
 
 笹村さんに小さく笑いかけると、篠田は篁の隣に駆け戻り、腕を組んで寄り添った。
 その仲睦まじい姿を見て、何故か槙の台詞が頭をよぎる。
 ——友達の話は本人の話、って言うよね。
 いや、まさか。
 まさか、な。
 浮かんできた想像を打ち消していると、顔を真っ赤にした戸館が、篠田へ詰め寄るところだった。

「なんだよ、このクソ女! 言いたい放題言いやがって、おかしいもんはおかしいって声上げて何が悪いんだよ! 同性愛なんて、国が結婚も認めてねえくらいだろ、どいつもこいつも頭おかしいんだよ!」

 わめく戸館と、黙って戸館を見上げる篠田の間に、見かねた坂下と野田が割って入る。
 けれど口を開いたのは、輪から少し外れた位置にいて騒ぎを静観していた槙だった。