突然の槙の提案に、桧垣は眉根を寄せた。
俺も同じ気持ちだった。いきなり、友達の話って何?
「そう、友達の話。新見と宮之原の話じゃなくて、新見の友達の話ね。友達の話だから、俺たちはそれが誰かなんて知らない。だから、新見は安心して自由に話せる。ね、友達の話をしてよ、新見」
「あー、なるほど、そういう感じね」
桧垣がうんうんと頷いた。
友達の話、っていう形で俺たちの話をしろっていうことか。
でも、勝手に話すことなんて出来ない。俺だけじゃない、佑士に関わる問題でもあるんだから。
俺の内心を見透かしたみたいに、槙がいたずらっぽく微笑んだ。
「ちなみにその友達が、『幼馴染』というか『義理の兄弟』に恋愛的な意味で好かれてること、俺たちは気づいてるから」
「え!?」
驚く俺をよそに、桧垣も槙の発言に同意した。
「いや、だって、その新見の友達? の『兄弟』、前に槙も言ってたけど、おまえのこと——じゃねえわ、おまえの友達のことよく見てるし、大体、俺らへの敵愾心隠す気ゼロだもんな。好かれてねえなとは何となく肌で感じてたけど、最近になって理由が分かって、むしろすっきりしたわ。あんなふうにおまえ、じゃない、おまえの友達を行きも帰りも独占してさ、もう普段の『周囲に関心ありません』ってだるそうな顔とは打って変わって表情筋動きまくりで、分かる奴には分かるって」
「結構あからさまだよね。あれは牽制だね」
「牽制だな。物好きだよな」
「世の中って案外、需要と供給のバランスがうまく取れるようになってるのかもしれないね」
「おい、さすがに俺に対して失礼だろ」
「おまえじゃなくて、おまえの友達の話だろうが」
「あ、そっか。——いや、でも失礼だからな!」
「はいはい、ごめんなさいごめんなさい」
二人にからかわれているうちに、全身の力が抜けてきた。なんだ、ばれてたんだ。
じゃあ最初から、相談相手はここにいたんだ。
AIやYAFFOOO知恵袋に聞いたこと自体は無駄じゃなかったけど、俺にはちゃんと、身近に話を打ち明けられる人が存在してたのか。ただ、俺自身が周りを見ようとしていなかっただけで。
俺はおそるおそる口を開いた。
「友達の話、なんだけどさ」
「うん」
「おう」
二人の返事を受けて、言葉を選びながら続ける。
「その、義理の兄弟になった人に、告られたけど断った、んだって」
「なんで? 好きじゃなかったからか?」
ごく普通に尋ね返されて、俺は桧垣の方を向く。
「だって、男同士だし、兄弟だし、って友達が」
「まず、相手のこと恋愛的な意味で好きか好きじゃねえかが先じゃねえの?」
「そんな簡単な話じゃないじゃん」
自分に降りかかった問題じゃないからって、桧垣は簡単に考えすぎだ。男女の恋愛じゃないんだぞ。
そう苦言を呈すると、桧垣は心底不思議そうに首を傾げた。
「そいつと一緒じゃないと、笑えないし、物も満足に食べれない。逆に言えば、一緒にいたら笑ってられるし、食い物がうまく感じる。だったら一緒にいりゃいいじゃん」
「障害が多すぎて未来が思い描けない、って友達が」
「ああもう、まどろっこしいな。おまえ、そんなことぐだぐだ言ってるうちに、向こうから愛想尽かされんぞ。あいつ、明らかにモテるだろ。明日には誰かがあいつの隣にいるかもしれない。おまえなんてどうでもよくなるかもしれない。それでいいのかって聞いてんだよ」
「それは……そんな風に、いつか駄目になる日が来るかと思ったら、やっぱり思い切れなくて」
「いつかって、いつだよ。後悔は、その日が来てからしろ!」
「だって怖いよ! 俺が全部、家のことも全部めちゃくちゃにするかもしれないって思ったら、怖くてたまらないんだよ!」
俺も同じ気持ちだった。いきなり、友達の話って何?
「そう、友達の話。新見と宮之原の話じゃなくて、新見の友達の話ね。友達の話だから、俺たちはそれが誰かなんて知らない。だから、新見は安心して自由に話せる。ね、友達の話をしてよ、新見」
「あー、なるほど、そういう感じね」
桧垣がうんうんと頷いた。
友達の話、っていう形で俺たちの話をしろっていうことか。
でも、勝手に話すことなんて出来ない。俺だけじゃない、佑士に関わる問題でもあるんだから。
俺の内心を見透かしたみたいに、槙がいたずらっぽく微笑んだ。
「ちなみにその友達が、『幼馴染』というか『義理の兄弟』に恋愛的な意味で好かれてること、俺たちは気づいてるから」
「え!?」
驚く俺をよそに、桧垣も槙の発言に同意した。
「いや、だって、その新見の友達? の『兄弟』、前に槙も言ってたけど、おまえのこと——じゃねえわ、おまえの友達のことよく見てるし、大体、俺らへの敵愾心隠す気ゼロだもんな。好かれてねえなとは何となく肌で感じてたけど、最近になって理由が分かって、むしろすっきりしたわ。あんなふうにおまえ、じゃない、おまえの友達を行きも帰りも独占してさ、もう普段の『周囲に関心ありません』ってだるそうな顔とは打って変わって表情筋動きまくりで、分かる奴には分かるって」
「結構あからさまだよね。あれは牽制だね」
「牽制だな。物好きだよな」
「世の中って案外、需要と供給のバランスがうまく取れるようになってるのかもしれないね」
「おい、さすがに俺に対して失礼だろ」
「おまえじゃなくて、おまえの友達の話だろうが」
「あ、そっか。——いや、でも失礼だからな!」
「はいはい、ごめんなさいごめんなさい」
二人にからかわれているうちに、全身の力が抜けてきた。なんだ、ばれてたんだ。
じゃあ最初から、相談相手はここにいたんだ。
AIやYAFFOOO知恵袋に聞いたこと自体は無駄じゃなかったけど、俺にはちゃんと、身近に話を打ち明けられる人が存在してたのか。ただ、俺自身が周りを見ようとしていなかっただけで。
俺はおそるおそる口を開いた。
「友達の話、なんだけどさ」
「うん」
「おう」
二人の返事を受けて、言葉を選びながら続ける。
「その、義理の兄弟になった人に、告られたけど断った、んだって」
「なんで? 好きじゃなかったからか?」
ごく普通に尋ね返されて、俺は桧垣の方を向く。
「だって、男同士だし、兄弟だし、って友達が」
「まず、相手のこと恋愛的な意味で好きか好きじゃねえかが先じゃねえの?」
「そんな簡単な話じゃないじゃん」
自分に降りかかった問題じゃないからって、桧垣は簡単に考えすぎだ。男女の恋愛じゃないんだぞ。
そう苦言を呈すると、桧垣は心底不思議そうに首を傾げた。
「そいつと一緒じゃないと、笑えないし、物も満足に食べれない。逆に言えば、一緒にいたら笑ってられるし、食い物がうまく感じる。だったら一緒にいりゃいいじゃん」
「障害が多すぎて未来が思い描けない、って友達が」
「ああもう、まどろっこしいな。おまえ、そんなことぐだぐだ言ってるうちに、向こうから愛想尽かされんぞ。あいつ、明らかにモテるだろ。明日には誰かがあいつの隣にいるかもしれない。おまえなんてどうでもよくなるかもしれない。それでいいのかって聞いてんだよ」
「それは……そんな風に、いつか駄目になる日が来るかと思ったら、やっぱり思い切れなくて」
「いつかって、いつだよ。後悔は、その日が来てからしろ!」
「だって怖いよ! 俺が全部、家のことも全部めちゃくちゃにするかもしれないって思ったら、怖くてたまらないんだよ!」
