いつも塩対応だった義弟の溺愛スイッチを押してしまったようです

 三つ目の電車に乗り込む前に、なんとか佑士へマフラーを突き返し、離れて歩くことを了承させた。
 このまま一緒に登校するようなら告白の返事を今してやる、と脅したのが効いたみたいだ。佑士は一瞬だけ眉をしかめ、渋々といった様子で俺に従った。
 その佑士は俺のやや前方で、戸館や篠田たちと言ったいつものメンバーに囲まれている。
 はいはい、人気者ですね。
 俺は唇を引き結んで、だるそうなそぶりの後ろ姿を睨む。
 戸館とだって普通に喋ってる。やっぱり俺といるよりずっと楽しそうだ。仲良さそうに笑い合ってるし。
 しばらく眺めていると、見るからにスポーツマンタイプの水泳部エース坂下と、二年連続生徒会役員のインテリ系男子の野田、その彼女の篁も途中から加わって、すごく華やかな一団に膨れ上がった。
 あ、篠田が佑士と腕を絡めようとして、さりげなくかわされた。でも、めげずに話しかけてる。……強いな。俺だったら心が折れる。
 そして俺はというと、ひっそり彼らの後について校門をくぐり、ぼっちのままの登校だった。知り合いがいない高校を選んだんだからしょうがない。佑士も同じ条件だっていうのは脇に置いておく。あいつは殊更、人目を惹く奴だから。向こうが規格外なんだ。
 教室でやっと桧垣たちと挨拶を交わした時には、その背中に後光が射しているように見えた。

「桧垣! 槙! おはよう!」

 自分の席で鞄を下ろしていた桧垣は、未知の生物にでも遭遇したような顔で振り向いた。
 
「朝からやけに元気じゃん……不気味……」
「おはよう、新見。病み上がりなのに、確かに明るいね。どうしたの? 何かいいことでもあった?」

 桧垣の向かい側に立っていた、もう一人の友人、槙も困ったように眉を下げた。
 佑士と同じくらい長身の槙は、ぼさぼさの癖毛で、分厚い縁なし眼鏡をかけている。磨けば光りそうだけど、垢抜けていない俺が進言するのもえらそうだから、口に出したことはない。

「なんだよ、友達ってやっぱ大事だなって思ったんだよ!」
「え……気持ち悪い」
「マジなトーンで返すなよ」
「恥ずかしい台詞吐いた人がいけないと思いまーす」
「うん、ちょっと臭かったかも」

 憎まれ口を叩いているものの、桧垣の声音が普段より弾んでいるのを俺は聞き逃さなかった。槙も柔らかく微笑んでいる。俺は二人の肩を抱いて、自分の方へと引き寄せた。
 
「じゃあ、もっと臭いこと言ってやる。桧垣も槙も愛してる!」
「おい、正気か? 熱で頭やられたんじゃね?」
「可哀想に……でも、伝染っちゃうかもしれないから離れてもらえるかな」
「照れるな照れるな」

 宥めるように二人の体を両手で叩いていたら、なんとなく視線を感じて窓際を見やる。
 えらくご機嫌斜めな様子の佑士とばっちり目が合って、俺は身を竦めた。