渇いた夜には酒と男と処方箋 〜目立たない事務員サキの、秘密のSNS恋愛相談室〜

帰宅してから、私は相談者に追加の質問を送った。

『彼と会えない日、あなたは自分の生活を楽しめていますか。彼から連絡が来るかどうかで、一日の気分が決まっていませんか』

しばらくして返事が届いた。

『彼から連絡が来るまで、何も手につきません。予定を入れても、会えると言われたら全部断ってしまいます』

私は目を閉じた。

恋愛が生活の一部ではなく、生活そのものになっている。

それは愛情の深さというより、自分の時間を相手に明け渡してしまった状態に近い。

『彼の予定に合わせること自体が悪いわけではありません。

でも、あなたの予定がいつも彼の都合で消えていくなら、一度、自分の生活を取り戻してください。

今度の日曜日、彼から連絡が来ても来なくても、あなた自身のための予定を入れてみましょう。

最初は落ち着かないと思います。でも、彼がいない時間にも自分の人生が続いていることを、思い出してほしいのです』

送信すると、私はスマートフォンを裏返した。

日曜日。

自分のための予定。

そんなものが、私にはあっただろうか。

スーパーへ行く。洗濯をする。部屋を片づける。相談に返信する。酒を飲む。

それで一日が終わる。

誰かと過ごすことを避けながら、誰かに選ばれることを心のどこかで待っている。

私はその事実を、相談者よりも認めたくなかった。

そのとき、佐伯からメッセージが届いた。

『今日はありがとうございました。もしよければ、また食事に行きましょう』

私はしばらく画面を見つめた。

返事は簡単だった。

『こちらこそ。ぜひ』

たった十文字ほどの文章を送るのに、私は五分もかかった。

その夜、私はいつものバーに行かなかった。

誰かに会いたくないわけではない。

ただ、名前も知らない誰かに、自分の寂しさを預けることが、いつもより少しだけ嫌になったのだ。