メイク・コンプレックス



 季節は巡り、私は二年生になった。

 沙保と美波とは二年連続同じクラスだ。
 二人はいまではすっかり打ち解けて、よくメイクの話で盛り上がっている。
 動画を見ながら真似したりするのは、ちょっと楽しそうだな、なんて思う。

 美波は教室でもよく笑うようになって、もう近寄りがたいなんて言う人はいなくなった。親しみやすくなったからか、しょっちゅう告白されているみたいだ。

「そういえば小春、中学のクラス会行く?」

 休憩中、いつものようにお喋りをしていたとき、沙保が思い出したように尋ねた。

「どうしようかな。まだ迷ってて……」

「クラス会って、もしかして前原くんも来るの?」

 美波が心配そうに尋ねた。

 私がうなずくと、沙保がえ、と目を丸くする。

「美波、前原のこと知ってるの?」

「あ、じつはね……」

 私は三年前のことを打ち明けた。

 ずっと言えなかった。大したことじゃないのかもしれない。でも、思い出すとやっぱり心がじくりと痛んだ。
まだ吹っ切れたわけじゃないんだ、と再確認するように思った。

話を聞いているうちに、沙保の顔がみるみる歪んでいく。

「うわあ、サイテー。そんなこと言うやつだったんだ」
 
 唖然として言う。

「でも、そっか。小春たち、けっこう仲よかったのに急に話さなくなったと思ったら、そういう理由だったんだ……」

「ねえ、ちょっと思ったんだけどさ」

 美波がふと思いついたように言った。

「もしかして、その前原くんて人、小春のこと好きだったんじゃない?」

 突拍子もない言葉に、私はえっ、と声をあげる。

「いやいや、まさかあー」

 笑いながら否定した。
 そんな素振りまったくなかったし、「気持ち悪い」とまで言われたのに。
 まさかそんなこと、あるはずがない。

「だって、誰よりも早く小春がいつもと違うって気づいたんでしょ? それって、いつも見てないと気づかないと思う」

「確かに、あたしも気づかなかったし……だとしてもやっぱり最低なことに変わりないけど」

「そ、そうかなあ……」

「うん、そうだよ」

 前原くんに会ったこともない美波が、なぜか自信満々に断言するのを見て、なんだか笑ってしまった。

 二人に話してよかったな、と思う。

 誰にも言わないままだったら、きっといまもずっと傷ついたままだった。それどころか何度も思い出してはほじくって、余計にひどくなっていたかもしれない。

 傷がなくなったわけじゃないけれど、こんなふうに笑えるようになるくらいには、私はあのことを過去にできているんだ。

「行こうかな、クラス会」

 ぽつりとつぶやくと、美波と沙保が心配そうに私を見た。

「えっ、大丈夫……?」

 私は安心してと言うように、うん、と大きくうなずいた。

「前原くんに聞きたいこともあるしね」

「うんうん。ついでに言いたいこと言っちゃえー」

「あたしがついてるからね!」

 美波と沙保が励ましてくれて、私はありがとう、と笑って言った。

 いまなら、きっと大丈夫。

 ちゃんと、言いたいことを言える。

 そんな気がしたんだ。