メイク・コンプレックス



 一週間後の水曜日。今日は美波のお姉さんのお店に行く日だ。

 美波がお姉さんに話をして、予約をとってくれているという。自分はいつもやってもらっているから、今日は私だけみたいだ。

 昨日の夜もメッセージで、楽しみだね、と言い合っていた。

 楽しみではあるけれど、ちょっと緊張する。エステなんていかにも美意識高い人が行くような場所に、私が行っていいのだろうか。通えるお金もないのに迷惑にならないかな……と、はしゃいでいる美波には言えないけれど、心配もあった。

 でも、こんなに嬉しそうな美波は初めてだ。文字だけでも楽しみにしているのが伝わってくる。そんな美波のはしゃぎっぷりにつられて、やっぱり緊張はするけれど、いまは楽しみな気持ちも同じくらいあった。

 ホームルームが終わって、前の席に座る沙保が振り向いた。

「ね、今日買い物行かない?」

「ごめん、今日は予定があって……」


『あたし、正直あの子苦手なんだよね』


 沙保の言葉を思い出して、つい口ごもってしまう。

「予定って、望月さん?」

「うん、そうだけど……」

 別に何か悪いことをしたわけじゃないのに、いたたまれない気持ちになった。

「そっか、じゃねー」

 沙保はとくに気にしていなさそうに手を振って教室を出て行った。

 美波と並んで廊下を歩いていると、周囲の視線が痛いくらいに刺さる。
 私は気にしないふりをして、明るい話題を振った。

 美波はこの学校の有名人だ。一年生だけじゃなく、話したことのない上級生まで美波のことを知っている。
 でも、私のことを知っているのは、せいぜい同じ学年の中でもほんの一部の生徒だけだ。

「相変わらず可愛いなあー、望月さん」

「目の保養だわー」

「てか隣の女子誰? 友達?」

「え? あの子が?」

「なんか地味……ってか全然釣り合ってないよね」

「ちょっと聞こえるってー」

 そう言いながら、声を抑えることもせずゲラゲラと笑い声をあげている。
 私に聞こえているかどうかなんて、どうだっていいのだろう。

 無意識に、両手をギュッと握りしめていた。


 ーーそんなの、自分が一番、知ってるよ。


 釣り合ってない。友達として不自然。不合格。
 そんな烙印を押されたようだった。

 知ってたよ。
 友達になった瞬間から、そんなことはわかりきっていた。

 美波と一緒にいて不自然じゃないのは、誰が見ても可愛い子なんだ。

 私じゃ違いすぎるんだ。