「みんなびっくりしてたね」
帰り道、美波が苦笑を浮かべながらつぶやいた。
「やっとクラスで普通に喋れる子ができた、って思ったんだけどなあ」
「まあ、仕方ないよ。だって、うちら全然似てないもん」
私はわざと明るく返した。全然、ちっとも気にすることなんてない。そう言いたかった。
友達は似たもの同士で集まることが多い。きっと、自分と似たタイプと一緒にいるほうが安心するから。
私と美波は全然似ていない。どこにいても目立つ美波と、どこにいても大勢の中に埋もれてしまう私。
釣り合いのとれない二人が仲良くしていたら、周りが不思議に思うのも当然だった。
「弱み、見せれたらいいのにね」
私は言った。思いついたことを早口で。
「ほら、この間みたいに、お互いに弱みを見せ合ってさ。暴露大会みたいにバーっと言っちゃえば打ち解けられるかもって」
「……無理だよ」
美波は困ったように眉を下げて笑う。
「私、メイクしてないと不安になるの。教室にいるとき、メイクが落ちてないか心配になって、休憩のたびに人気のないトイレを探してメイク直してる。それを知られたくなくて隠してるの。バカみたいでしょ」
休憩中、美波はバッグを持ってふらりと教室を出て行く。そして授業が始まる直前に帰ってくる。
あのバッグの中には、ポーチが入っていたのだ。それはきっと、美波が弱さを見せないで教室の中にいられるための道具なんだ。
誰にも注目されることのない私と違って、美波は嫌でも視線を浴びてしまう。それを全身で感じとってしまうのだろう。
私にはまるで縁のない悩みだ。だけど、わからなくても、わかろうとすることはできるかもしれない。
「美波って、ほとんどわからないくらいナチュラルメイクだよね? それってどうやってやるの?」
やっぱりメイクをしたいとは思えないけれど、ふと気になって尋ねた。
その瞬間、美波の顔がパッと明るくなるのがわかった。
「これね、お姉ちゃんに教えてもらったの。ほとんどわからないくらい薄いんだけど、するのとしないのじゃ全然違うんだよ。魔法みたいに印象が変わるの」
「そういえば、お姉さんがエステやってるんだっけ……あっごめん、友達から聞いて」
慌てて付け足すと、美波が気にしていないというようにくすっと笑った。
「そうそう、お姉ちゃんはメイクもマッサージもすごく上手いの。そうだ。マッサージ、小春もやってもらおうよ」
「へ、私?」
「すっごい気持ちいいし、さっぱりするよ。私もついてくし、初回は無料で勧誘とかもないから」
「う、うん」
あまりに美波が目を輝かせて言うから、私は勢いに押されてうなずいてしまった。
まあ、マッサージをしてもらうだけなら、いいかもしれない。それにそこまで絶賛されるとちょっと気になってくる。
「ほんと? じゃあお姉ちゃんに予定聞いとくね!」
飛び上がりそうなくらい喜んでいる美波を見て、私は思わず笑ってしまった。
さっきまで沈んでたのが嘘みたいだ。
お姉さんのことが大好きで、エステティシャンとして尊敬しているのが伝わってくる。
メイクをしていないと不安になると言っていたけれど、きっとそれだけじゃなくて本当に好きなんだって。
可愛い子は、ただ可愛いだけじゃない。見えないところで努力しているから輝いて見えるんだ。
そんな当たり前のことを教えてもらったような気がした。


