メイク・コンプレックス


 昼休憩のチャイムが鳴って、みんなお弁当を食べるために机をくっつけたり、購買へ行ったりする。

 美波はどこでお弁当食べているのか、いつもチャイムが鳴るなりトートバッグを持って、いち早く教室からいなくなってしまう。

 一緒にお弁当食べようと誘ってみたけれど、沙保と一緒だからか、遠慮しとく、と断られてしまった。

「ねえ、何があったの? 急に望月さんと仲良くなっててびっくりなんだけど」

 案の定、お弁当箱を広げるなり、向かいに座る沙保に問い詰められた。

「あー……帰り道でばったり合って、なんか意気投合しちゃって」

「ふーん。あの誰とも関わろうとしなかった望月さんがねー」

 気のせいだろうか。どこか冷ややかな口調が気になった。

「あたし、正直あの子苦手なんだよね」

 沙保の突き放すような言葉に、気のせいじゃなかったとわかる。

「え、なんで?」

「なんかいつもツンとしてるし、人のこと見下してる感じがする。小春のことも内心下に見てるんじゃない?」

 沙保は明るくていい子だけど、たまにこういう卑屈なことを言うことがある。

 なんでそんなこと言うの、って言いたいけれど、私には沙保の気持ちも痛いほどわかってしまった。

 きっと、自分に自信がないから。
 どんなにメイクでカバーしても、自分の中にある自信のなさを完全に消すことはできない。
 それが言葉になって出てきてしまうんだ。

 わかるのに、ついムキになって言い返してしまう。

「美波はそんな子じゃないよ」

 ただ、人と話すのが苦手なだけ。
 苦手だから話しかけられないようにガードしているだけ。
 それなのに見下してるなんて、完全に偏見だ。見た目だけで判断してほしくない。

「そんな子じゃないって言われても、あたし望月さんのことよく知らないし」

 その通りだ。お互いのことをよく知らないから、見た目だけで判断するしかないのだ。

 伝わらないことが悔しくて、もどかしくなった。

 どう言えばわかってもらえるだろう。

 本当はすごくいい子なのに。おもしろくて、話しやすい子なのに。ただ、素を見せるのが苦手なだけで。

 きっと、教室で私に話しかけるだけで、美波にとっては勇気がいることだったのだと思う。
 それなのに、その勇気まで蔑ろにされてしまった気がした。

 いつもなら、くだらないおしゃべりをしているうちにあっという間に過ぎてしまう昼休憩が、今日は何倍も長く感じた。