「……そっか。辛いこと思い出させちゃってごめんね。話してくれてありがとう」
望月さんは言った。
私はううん、と首を振る。
「勢いで話しちゃったけど、話せてよかった。ちょっとだけ消化できた気がする」
えへへ、と照れ笑いをする。
中学のときは誰にも言えなかった。でも、いま言えたってことは、あの嫌な記憶を少しだけ乗り越えられたってことなのかもしれない。
「でも、せっかく頑張ってオシャレしたのにそんなこと言うなんて、ひどいねその男の子。ていうかガキっぽい」
望月さんは憤慨して言うのを聞いて、私は思わずぷっと吹き出してしまった。
「ガキって。望月さん、そんな言葉使うんだ」
「あ……っ」
望月さんは我に返ったように顔を赤らめる。
「あ、でも私、家ではこんなだよ? 学校ではすましてるけど」
「あはは、すましてる自覚あるんだ」
今度は思いっきり笑った。
近寄りがたいと思っていた望月さんとこんなふうに話せる日がくるなんて、思ってもみなかった。
一人が好きっていうのもみんなの思い込みで、本当は違うのかもしれない。
「今日の望月さん、なんかいいね。自然体って感じで」
学校でももっと力を抜けばいいのに、と思ってしまう。
だけど私にとって簡単に思えることでも、望月さんにとっては簡単じゃないのかもしれない。
「……弱みを見せたからかも」
望月さんがふと思いついたように言う。
「動物って、生きるための本能で反応で自分の弱みを見せないようにする習性があるんだって」
「へえー……って、なんか規模がでかいね?」
「うん。でね、弱みを見せ合うことは、信頼の証なんだって」
望月さんは少し照れ臭そうに、そう言った。
それはきっと、不器用な望月さんなりの『友達になろう』って言葉なんだと思った。


