「美緒って本当、何誘ってもノリ良く来てくれるから助かる〜」
放課後のファミレス。
揚げたてのポテトをつまみながら、葵が屈託のない笑顔で言った。
じっとりとした油の匂いと、ドリンクバーの機械が吐き出すシロップの甘い香りが混ざり合う雑多な店内。
賑やかなBGMや周囲の話し声が重なり合い、店内にはどこか浮ついた放課後の空気が満ちている。
「あ、うん。みんなといると楽しいし」
私は氷の溶けかかったウーロン茶のグラスを固く握りしめながら、引きつりそうな顔で答えた。
水滴でぬれたグラスの冷たさが、じんじんと指先の感覚を麻痺させていく。
ふと、隣に座る結衣と目が合った。
結衣は一瞬、何かを言いたげに口唇を強く噛み締め、ふいっと気まずそうに目を逸らした。
そのわずかな横顔の陰影に、微かな鬱陶しさや、呆れの影が見えた気がして、喉の奥が砂を噛んだようにカラカラに乾く。
……あ、れ。
私、また何か変な態度とったかな……?
背筋をスッと嫌な汗が伝い落ちる。
完璧に合わせられているはずだった。
笑顔の角度も、相槌のタイミングも、全部寸分の狂いもなく「良い子」を演じていたはずなのに。
どこか不自然な違和感があったのだろうか。
ただ適当に合わせているだけだって、心の中を見抜かれてしまっているのだろうか。
彼女たちが少しでも視線を交わしたり、スマホの画面を覗き込んでヒソヒソと低めの声でしゃべり始めたりするたびに、私の心臓は嫌な音を立てて波打った。
喉元まで酸っぱいものが競り上がってくるような、吐き気を伴う恐怖。
雨の日に歪んだ窓ガラス越しに見る世界のように、彼女たちの何気ない仕草のすべてが『美緒って面倒くさいよね』『本音が見えなくて不気味だよね』という、無言の拒絶に見えてしまう。
嫌われたくない……。
見捨てられたくない……。
このグループから弾き飛ばされたら、私の高校生活には何の居場所も残らない。
一人で教室の隅にポツンと座る自分の姿を想像するだけで、呼吸の仕方を忘れてしまいそうになる。
だから私は、もっと『良い子』になろうって、必死に努力したんだ。
自分という人間の存在を、もっと深く、遠くへ消し去りながら。



