翌朝、秋晴れの澄み渡った空の下で、文化祭の本番が始まった。
校内は朝からどこか浮き足立った熱気に包まれ、色とりどりのクラスTシャツを着た生徒たちが廊下を行き交っている。
手作りの看板や装飾が飾られた校舎は、昨日の夕暮れの静寂が嘘のように賑やかだった。
「美緒ー! はやくいこ!」
体育館の前で、莉子が大きく手を振っていた。
その隣には葵と結衣、そして田中さんも並んで笑っている。
「うん、いま行く!」
私は大きく返事をして、彼女たちのもとへ駆け寄った。
大歓声の中で始まったダンス部のステージを、私たちは肩を並べて見上げた。
眩しい照明の光、身体の奥まで重低音で揺らすスピーカーの音、周りの生徒たちの割れんばかりの歓声。
その圧倒的な「生」の熱量が、私の全身を心地よく包み込んでいく。
昨日の夕暮れ、一人で暗闇の中にいたことが遠い昔のことのように感じられた。
「ねえ美緒、楽しい?」
ステージの熱気に顔をほてらせた莉子が、隣からひょっこり覗き込んでくる。
「うん! めっちゃ楽しい!」
私はお腹の底から声を張って答えた。
もう、顔の筋肉が勝手に作る違和感のある笑顔じゃない。
口の端を引きつらせることも、相手の顔色をうかがってトーンを調整することもない。
心の底から溢れ出る、私だけの、素顔の笑顔だった。
「そっか。よかった!」
莉子は満足そうにニッと笑い、再びステージへ視線を向けた。
その横顔を見つめながら、私は胸の奥がじんと温かくなるのを感じていた。



