上林弥生の事情


週末、弥生と瑛美は再び東雲家の食卓についていた。

母が煮物を取り分け、父が雪哉に来週の予定を尋ねる。雪哉は答えながら、空いた小皿へ魚を移した。前にも五人で囲んだ食卓で、席もほとんど変わらなかった。

ただ、今日は母が、自分から話を始めなかった。

「お母さん、それ、もういいよ」

瑛美に言われ、母は取り分けていた箸を止めた。

「そうね。足りなかったら言って」

皿には十分に載っていた。母は箸を置き、自分の席へ戻った。

雪哉が妹を見る。

「お前、今日は食わないの?」

「食べてるでしょ」

「いつもなら、もうおかわりしてるだろ」

瑛美は返事をせず、椀を取った。

弥生は隣で、自分の皿へ箸を伸ばした。母に味を尋ねられると、いつもと同じように答えた。

「おいしいです。生姜、よう効いてますね」

「少し多かったかしら」

「いえ。僕はこれくらいが好きです」

母はうなずいたが、おかわりを勧めはしなかった。

雪哉以外の四人は、このあと何を話すか知っている。弥生の鞄は、食卓から少し離れた椅子に置いてあった。

最後の皿を空にすると、雪哉は水を飲んで椅子を引いた。

「ごちそうさま。俺、ちょっと——」

「雪哉。少し残りなさい」

父の声に、雪哉の手が止まった。

「何?」

「話がある。座ってくれ」

母は立たなかった。瑛美も、皿を片づけようとはしない。

雪哉が父から母へ目を移す。その視線が一周して戻ってくる頃には、弥生は鞄から資料を取り出していた。

「弥生くん、頼む」

「はい」

弥生は食器を少し脇へ寄せ、一覧を置いた。

「相良建工への発注について、確認したいことがあります」

*

雪哉は座り直し、紙へ目を落とした。

「それ、会社で話せばいいだろ」

「会社では聞けへんこともありますので」

弥生は一覧の下から、追加工事の契約変更を出した。

変更前の金額と、変更後の金額。その差を、東雲がすべて負担している。費用の内訳と、他社に同様の変更を頼んだ案件の条件も並べた。

「急な変更に応じてもろた分は、東雲が持つべきです。ただ、ここまで全部引き受ける必要はなかった。相良にも負担を求められる分が含まれてます」

「相良は、そのせいで人を組み直してる。あの時は工程を止める方が損だったんだよ」

「工程を止めるか、全額払うか。その二つしかなかったわけやありません」

弥生は当時の打ち合わせ記録を重ねた。

「費用を分ける話は、してませんね。相良から全額負担を求めた記録もない。宮原さんの判断で、最初から東雲が全部持つことになってます」

雪哉は紙をめくった。

「だったら、宮原に聞けよ。俺の承認じゃない」

「伺いました。お義兄さんにも話したうえでの条件やったそうです」

「相談は受けるだろ。それくらい」

「瑛美にも、これでええと答えてはりますね」

雪哉が妹を見た。

瑛美は食卓へ置いていた手を動かさず、兄を見返した。

「聞いたよ。全部こっちで持つのかって。お兄ちゃん、東雲で持つのが筋だって言った」

「だから、あの時は——」

「次の人を確保できなくなるから、支払いも早めていいって。別の案件でも言ったよね」

弥生は支払いの記録を出した。

「こちらは長谷川さんの承認です。通常の支払日より、かなり早い。相良以外には、同じ扱いをしてません」

「完成確認は済んでる。どうせ払う金だろ」

「いつ払うても同じ、とは言えません。東雲の手元から現金が出る日が変わります」

雪哉は口を閉じ、記録の数字を見た。

「相良を次も使うなら、人を押さえてもらう必要がある。それは東雲のためでもあるだろ」

「その人員のために、相良が先払いを必要としていたことは、ご存じでしたね」

「……何が言いたいんだよ」

弥生は二件の処理日を示した。

「相良さん本人にも確認しました」

紙を押さえていた雪哉の指が止まった。

「……澄花に会ったのか」

「はい。契約変更の経緯を伺いました」

「何を聞いた」

「相良から条件を変えてほしいと頼んだんか。それとも、東雲から提示したんか。それから、変更の前に、お義兄さんへ何を話してはったんか」

弥生は聞き取りの記録と、メッセージの日付を置いた。

月末の支払いが厳しいと話した三日後に、東雲から前倒しの連絡が入っている。追加工事で利益が残らないと相談したあとには、費用を全額負担する判断が行われていた。

「相良社長からは、どちらも正式には依頼されてません。お義兄さんには、会社が苦しいと話してはった。ただ、それで東雲の条件が変わったとは知らんかったそうです」

「澄花は関係ない」

返事が早かった。

「彼女が要求したとは、言うてません」

弥生は雪哉を見た。

「相良の事情を知ったあとで、お義兄さんが東雲の判断に働きかけた。その結果、東雲に残るはずの利益が減って、支払いも早まった。そこを伺ってます」

雪哉は資料を見下ろしたまま、動かなかった。

父も母も何も言わない。雪哉の前には、弥生が順に置いた紙が並んでいた。

*

やがて雪哉が、椅子の背にもたれた。

「……別に」

父の眉が動いた。

「金盗んだわけじゃないだろ」

弥生は返事をせず、続きを待った。

「相良は仕事してる。成果物だってある。俺が一円でも懐に入れたか?」

「入れてませんね」

「だったら横領でも何でもない」

「僕、横領やなんて一言も言うてませんよ」

「じゃあ何だよ」

「会社に損害出したって言うてるんです」

雪哉は一覧へ手を置いた。

「この変更分を全部、損だって言うつもりか? 相良がいなかったら、間に合わなかった工事もあるんだぞ。ほかに頼めば、もっと高くついたかもしれない」

「せやから、必要な費用は分けてます」

弥生は一覧の二つの欄を指した。

「工事に要った金と、東雲が余分に引き受けた金は別です。この差を、どう説明されますか」

「一件の採算だけ見て、全部決められるわけじゃないだろ。協力会社を育てるのも仕事だ。次も頼める相手が残れば、こっちにも利益がある」

その言い分だけなら、間違ってはいなかった。

雪哉は現場を知らない人間ではない。目先の利益を譲り、長く付き合う判断はあり得る。

弥生は当時の東雲の資金繰り表を、その隣へ置いた。

「東雲が、自分の支払いをどうつなぐか考えてた時期です。それでも相良だけには、契約より先に金を出した。将来の取引のためや言うんやったら、その負担を東雲が引き受ける判断を、正面から通すべきやったでしょう」

「担当者の承認はあるだろ」

「皆さん、相良社長とお義兄さんが交際してはることまで、ご存じでしたか」

雪哉の手が、紙から離れた。

「会社として相良を支援する話にはせんと、お義兄さんと近い方へ、案件ごとに条件を変えてもろうた。全体でどれだけ負担するか、東雲として判断してへんかった」

弥生は一覧を戻した。

「相良の仕事が必要やったことと、この条件にした理由は、別です」

「俺は東雲のためにもなると思ってやってる」

「相良社長の相談を受けたあとで?」

「あいつの会社がどういう状態か分かれば、こっちの仕事に響くかどうかも分かるだろ」

「東雲の都合やのうて、相良の苦しいところに合わせて、条件が変わってます」

弥生は食卓の上に揃えた資料を見た。雪哉は数字を読める。この支払いがいつ東雲から出て、どの工事にどれだけ利益が残らなかったかも、分からないはずがない。

「好きな女の会社やから、仕事回した」

「違う」

「ほかには出さんような条件で、金払うた」

「だから違うって」

「東雲に残るはずの利益まで渡した」

雪哉の口元が歪んだ。

弥生は、そこから目を離さなかった。

「好きな女にええ格好したいんやったら、自分の金使うたらええでしょう」

雪哉の肩が震える。笑っていた。

「……お前がそれ言うの?」

雪哉がゆっくり顔を上げた。

「何がです?」

「いや、すごいなと思って」

乾いた笑いが漏れた。弥生は置いていた手を、資料の脇へ引いた。

「女のために金使うな、って?」

「会社の金を、です」

「同じだろ」

「全然ちゃいますよ」

雪哉は笑うのをやめ、弥生を見た。

「お前、瑛美のためにいくら使った?」

隣で、瑛美が息を呑んだ。

弥生は表情を変えなかった。

「昔からずっと、こいつのこと好きだったよな」

「それが何です?」

「東雲が傾いた途端、上林キャピタルから何百億突っ込んだ?」

「投資です」

「その条件に、妹との結婚つけといて?」

弥生は答えなかった。

「それで俺に、女と仕事を分けろって説教すんの?」

雪哉が、並べられた資料を指先で押した。

「お前の方がよっぽどだろ」

弥生は数秒、黙っていた。

東雲に資金を入れる判断も、そこに瑛美との結婚を結びつけたことも、別の誰かに決めさせたわけではない。返ってこなければ、それも自分が引き受ける。そのつもりで金を出していた。

考えて、口を開く。

「僕の金やろ」

雪哉の顔から、笑みが消えた。

「……は?」

「正確には、上林キャピタルの金ですけど」

弥生は真顔で続けた。

「僕が判断して、僕が責任取る金です」

「そういう問題か?」

「そういう問題ですよ。お義兄さんが使うたんは、東雲の金でしょう」

「お前の会社だって、お前一人のものじゃねえだろ」

「必要な手続きは通してます。金を入れたあとも、僕が回収まで責任持つ。東雲を立て直すために、今もここへ来てるんです」

「だから自分はいいって?」

「少なくとも、誰の判断やったか分からんようにはしてません」

雪哉が鼻で笑った。

「綺麗に言えば違うことになるのかよ。同じだろ!」

「どこがやねん!」

食卓に、声が響いた。

母が顔を上げ、瑛美の手が膝の上で止まった。父も、弥生を見た。

次の言葉は、息を整えるより先に出ていた。

「僕は東雲から金抜いてへんやろ!」

「お前だって女のために会社動かしてんじゃねえか!」

「僕が責任持てる範囲でやってんねん!」

「何百億が範囲内なら、何でもありかよ!」

「せやから、他人の会社の金を勝手に女に流すんと一緒にすな!」

「他人の会社じゃねえよ!俺ん家の会社だ!」

弥生は椅子を押して、立ち上がった。

脚が床を擦り、大きな音がした。膝が食卓に当たって、水の入ったグラスが揺れた。

「せやからやろ!」

雪哉を見下ろした。

「自分の家の会社やから、何してもええんか!」

「そんなこと言ってねえ!」

「言うてること一緒やろ!」

「弥生くん」

父の声がした。それに返事をするための言葉が、出てこなかった。

「お義父さんが何十年、この会社守ってきたと思てんねん!」

雪哉も立ち上がった。椅子の背が後ろの壁に当たったが、振り返らなかった。

「お前に言われる筋合いない!」

「あるわ!」

「ねえよ!」

「僕かて二十年、この家見てきたんや!」

言ってから、声が続かなかった。

父がこちらを見ていた。母も、瑛美も。

この食卓で夕飯を待ち、泊まる日は風呂に入り、父が帰ってくるまで三人で遊んでいた。帰ってきた父の上着を、母が受け取った。遅い時間でも、会社から電話がかかってくることがあった。

弥生が数字だけ見て、事業をやめればいいと言った時も、父はここで怒った。

そこにいた雪哉が、今、東雲の金を流しておいて、俺ん家の会社だと言う。

「子供ん時から知ってんねん!」

「だから何だよ!」

「お義父さんがどんだけ仕事してたかも! お義母さんがそれ支えてたんも! 瑛美が東雲のこと大事にしてんのも!」

息が足りなくなった。吸い直して、まだ言った。

「お前かて知ってるやろ!」

雪哉は唇を結んでいた。

会社のことなら、雪哉に聞けば分かる時期もあった。三つ年上で、先に働き始めた。いずれこの人が父のあとを継ぐのだと、弥生も疑わずに見ていた。

「何でこんなアホなことしたんや!」

「うるせえよ!」

「助けたいんやったら、自分で助けたらええやろ!何で東雲巻き込むねん!」

「相良を助けることが、東雲のためにもなるって言ってんだろ!」

「今、東雲がどうなってんのか見えてへんのか!」

弥生は食卓の資料を指した。もう、どの紙か確かめていなかった。

「女にええ格好したかっただけやろ!」

「黙れ!」

「そんなん自分の金でやれや!」

雪哉が食卓を叩いた。

皿の縁が触れ合い、乾いた音がした。母の手が、近くの椀へ伸びた。

「お前にだけは言われたくねえんだよ!」

「何でや!」

「妹一人欲しさに、何百億使った馬鹿が!」

「僕の金や言うてるやろ!」

「そこじゃねえんだよ!」

「そこや!」

瑛美が名前を呼んだ。弥生は顔を向けなかった。

雪哉が食卓から手を離し、弥生へ身を乗り出した。

「お前、自分がどんだけ狂ってるか分かってんのか!」

「分かってるわ!」

即答だった。

雪哉が一瞬、詰まった。

「分かってやってんねん、こっちは!」

二十年、好きで好きで仕方がなかった。瑛美が断れないように、東雲を傾けた。何百億も出して、結婚した。

それが異常なことくらい、自分でも分かっている。

「だから、俺に説教できんのかよ!」

「僕の話は今どうでもええねん!」

「よくねえだろ!」

「今はお前の話してんねん!」

「都合よすぎんだろ!」

「知るか!」

資料の順番も、どの説明に何を示せばいいかも、もう頭になかった。

雪哉は、分かっている。それでもまだ、自分は盗んでいない、仕事はさせていると言う。父と母を前にして、それで済ませようとしている。

「お義父さんとお義母さんが、どんな顔してんのか見ろや!」

雪哉の顔が止まった。

視線は、まだ弥生に向いていた。

「見ろ!」

ようやく雪哉が、父の方を見た。

父は何も言わなかった。息子の顔を、まっすぐ見ていた。

母は椀を押さえていた手を引き、俯いていた。食事の前から、声が少なかった。

「瑛美がどんな気持ちで、東雲のこと心配してたと思てんねん!」

雪哉の視線が、妹へ動いた。

「会社潰れるかもしれんって、自分が何とかせなあかんって!」

自分が、そうさせた。

一瞬、言葉が喉に引っかかった。瑛美の返事を待った社長室と、融資の条件が頭をかすめた。

それでも、雪哉を見ると次の声が出た。

「お前、兄貴やろ!」

瑛美の兄だ。弥生にとっても、七歳の頃から、先を歩いていた人だった。

その人が、妹に隠していた。父にも、母にも。澄花には正当な取引だと言って、今は自分のしたことを、東雲のためだったと言っている。

「……うるせえ」

「何してんねん、ほんまに!」

「うるせえ!」

雪哉が食卓の脇を回ってきた。

弥生は身体を向けた。次の瞬間、胸元を掴まれ、シャツが首に食い込んだ。

「雪哉!」

母の声が上がった時には、弥生も雪哉の胸倉を掴んでいた。

「お前に何が分かる!」

「分かるわ!二十年見てきた言うてるやろ!」

「他人のくせに!」

二十年、この家へ来ていた。今は瑛美と結婚している。

それでも、他人か。

気づいた時には、拳が出ていた。雪哉の顔が横を向き、弥生の頬にも何かが当たった。もつれた二人が食卓にぶつかり、椅子が倒れ、資料が床へ散った。

「弥生!やめて!」

瑛美が弥生の腕を抱えて引き戻し、父が雪哉を押しとどめた。

「離して!こいつ一発殴らな分からへん!」

「もう殴ったでしょ!」

「足りひん!」

「足りる!」

なお前へ出ようとした弥生に、父の声が飛んだ。

「もういい!」

二人とも止まった。荒い息だけが残った。

「座りなさい。二人とも」

弥生は、瑛美に掴まれた腕をようやく下ろした。

*

父が倒れた椅子を起こした。二人が座ると、父は雪哉を見た。

「経営から外れなさい」

口元を押さえていた雪哉の手が下がった。

「……親父」

「取締役は退いてもらう。必要な手続きは進める。その間も、お前に発注や支払いの判断はさせない」

声は、もう大きくなかった。

「相良との取引は洗い直す。損失を確かめて、お前に負担してもらう分も決める」

「相良は……仕事は、ちゃんとやってる」

「それは分かっている。正当に請けた仕事と、お前が歪めた条件は分けて確認する」

父は椅子の背へ手を置いた。

「私は、お前に東雲を任せるつもりだった」

雪哉が顔を上げた。

「任せられない。今のお前には」

母が俯いた。雪哉は父を見上げたまま、しばらく動かなかった。

「……分かった」

弥生は何も言わなかった。腕を掴んでいた瑛美の手が離れ、乱れた袖が目に入った。襟を直そうとすると、拳が痛んだ。

義父母の目の前で、義兄と怒鳴り合い、殴って、瑛美に止められた。

——やってもうた。

頭の熱が引くほど、自分の声が戻ってきた。知るか、と怒鳴った。離して、と瑛美にまで言った。

弥生は両親へ頭を下げた。

「取り乱してしもうて、申し訳ありません。手まで出したんは、ほんまにすみません」

父は息をつき、二人の顔を見た。

「まず怪我を見なさい。雪哉とは、そのあとで話す」

母が冷たいタオルを持ってきた。弥生は右手に当てたまま、瑛美が床の資料を拾うのを見ていた。

*

手当てを終えると、弥生と瑛美は先に帰ることになった。資料を父へ預け、弥生は玄関でもう一度頭を下げた。

瑛美は母に「また連絡するね」と言い、弥生と一緒に外へ出た。

迎えの車へ乗り込んでからも、瑛美は黙っていた。

弥生は膝の上に置いた手を見た。右手だけが少し赤くなっている。シャツの胸元を伸ばしても、皺は戻らなかった。

先日、離婚の話が出たばかりだった。

あの時も、まともに話ができなかった。家も会社も捨てると言って、瑛美を黙らせた。そのすぐあとに、今度は実家で兄を殴った。

横を見ると、瑛美は窓の方へ顔を向けていた。

弥生は声をかけようとして、やめた。

何から謝ればいいか考えていると、瑛美がこちらを向いた。

「弥生、頬」

弥生は反射的に手を上げた。

「……ああ。あとで冷やす」

「うん」

瑛美はそれだけ言い、視線を落とした。

もっと何か言ってくれれば、と思ってしまった。怒ってくれてもよかった。馬鹿じゃないの、とでも言われたら、少なくとも返す言葉はあった。

だが、彼女は黙ったままだった。

——そら引くよな。

弥生も口を閉じ、背をシートへ預けた。

整えて持ってきた資料は、東雲家へ置いてきた。今日、話すつもりだったことは、その順番まですべて決めていた。

覚えているのは、雪哉の襟を握った感触と、自分を引き戻す瑛美の声だった。

帰り着くまで、次の言葉は出なかった。