番犬と狼

やがて細長い光が体育館倉庫に差し込み、徐々に扉が左右に開いていく。
「誰か来たのか……」
「そう、みたいだな」二人は扉が開いていくのを見つめた。
次の瞬間、聞き慣れた声が二つ同時に匠海と勇の耳に飛び込んできた。
「お前たち大丈夫か!」
「二人とも怪我はないかい?」
雨宮凛と桜寺優作が顔いっぱいに心配そうな表情を浮かべて二人を見下ろした。
「な、なんでお前らがここに来たんだ」
匠海は目を丸くして立ち上がる。すると凛は片手を腰に当てて、
「体育教師で剣道部顧問の大樹先生が、お前らに用があるから探していたんだ。そこにたまたま私と優作が通りがかってな」
「二人はまだ体育館から戻ってきていないと言ったら、大樹先生が慌てて職員室から体育館の鍵を持ってきたんだ。それで謝りながら先生が僕達に鍵を渡したんだ」
優作の穏やかで柔らかく優しい声を聞き、立ち上がった二人は膝や腰から力が抜けそうになるのをなんとか堪えた。
「なんだよ。俺らは忘れ去られてたってことかよ」
「まあもうなんでもいいから帰ろうぜ」
匠海と勇の脱力した声が体育館前の長い廊下に響く。先ほどまで居た体育館倉庫内の薄暗い闇が嘘のように空は真っ青に晴れ渡っていた。


おわり