投票日当日はあいにくの雨。少しだけガッカリしながら、いつもより早い時間、朝の六時に出勤した。
「七時から投票開始です。黒澤くん、日中は電話番をお願い」
「はい」
「じゃ、今日は一日長いけど、よろしくお願いします~」
投票時間は朝七時から夜八時まで。そこから開票作業にはいるので、今日はかなりの長時間勤務になる。
俺は緊張しながら電話の前に座った。問い合わせの内容は、想定内の内容のみだった。それでも忙しく対応に追われていると、あっという間に投票時間が終わった。
選挙管理委員会の仕事はここからが本番だ。開票作業をするため全員で開票所になっている隣の公民館へ移動する。
午後八時半をすぎると、開票所には投票所から投票箱が集まってきた。投票箱が開けられ、中身が机の中に出される。そこからざっくりと候補者ごとに投票用紙を分けて行く。各候補者の枚数が気になって凝視していると、ぽんと肩を叩かれた。
「黒澤くんはこっち!」
俺はぱっと見判断が付かない票を確認する係になった。別テーブルでどの候補者への投票なのか、無効票なのかを判別していく。
作業をしていても、仕訳が気になって仕方ない。紙量で、大体の数が分かりそうだが…。
「黒澤くん、集中…!」
「あ、はい…!」
開票作業開始から三十分後、一回目の開票速報を出す時間になった。現在の票を集計担当が事務的に報告する。
「二十一時現在の数値、結城候補六百、根本候補六百、大和田候補百です」
この時点で大和田さんは脱落、二人の一騎打ちになった。集計担当は開票所の掲示板に貼りだすため、一回目の会報速報を持って出て行く。きっと掲示板のところには後援会のスタッフがいて、結城も速報を聞いているはず…。
開票率は二十%ほど。まだまだこれからだ…!
ドキドキし過ぎて、胃が痛くなってきた。祈るような気持ちで作業を続けること三十分。集計担当が再度途中経過を報告した。
「二十一時三十分現在の数値、結城候補二千四百、根本候補二千、大和田候補二百です」
開票率は五十%で結城が四百、リードした…!
確認後集計担当が外の掲示板に速報を張り出すと、少しだけざわめきが聞こえてくる。
更に三十分後の二十二時。
「結城候補四千二百、根本候補二千七百、大和田候補三百…」
開票率、八十%。ほぼ決まりだ…!そしてそこから、二十分後。
「結城候補四千九百五十、根本候補三千百、大和田候補四百五十…!」
開票率九十五%。
結城の当選が確実になった…!
やった…、よかった…!
結城の頑張りが認められたことが嬉しい!
この場で飛び跳ねたいくらいだったが、まだ開票作業中だ。ここが選挙事務所なら、おもいっきり万歳できるのに…。
最終的に開票作業が終わったのは二十二時五十分。結城が五千二百、現職の根本町長が三千三百、大和田さんが五百。
結果、結城の圧勝で大郷町長選挙は幕を閉じた。
はやる気持ちを抑えつつ片付けをして、全ての業務が終了する頃には日付が変わっていた。外はまだ少し小雨が降っている。厚い雲に隠れて星は見えない。
仕事を終え役場を出ると急いで車に乗り、結城にお祝いのメッセージをするためスマートフォンを取り出す。すると既に結城から何件かメッセージが来ていた。
『当選しました』
『事務所で達磨に目を入れるので、来てほしい』
『あ、でも仕事か…。ごめん、自分で目、入れちゃう』
メッセージが来ていたのは当選確実がでた二十二時半ごろ。
多分そのあとすぐ、支援者が沢山いる事務所の中で万歳三唱したあと、達磨に目を入れたのだろう。選挙って基本そういう流れだ。
でも俺に一緒に、達磨に目を入れてほしいって言った手前、気を遣ってくれたんだな…?
俺は結城の、その気持ちが嬉しかった。
『おめでとう。あと、お疲れ様!』
本当はもっと、気の利いたメッセージを送りたかったが、シンプルに今、一番思っていることを送信した。すると、すぐに着信がきた。
「黒澤くん、いま大丈夫?」
「うん。今終わったところ」
「そっか。仕事で疲れてるところ、悪いんだけど…。これから俺の家に来られる?」
「え…?」
結城は田舎の空き家を買って住んでいるのだが、その家を選挙事務所にしている。他の支援者も集まっているのに俺が行ったりしたら…。
躊躇すると、結城は笑った。
「もうマスコミとか手伝いの人はみんな帰っていないよ。本当は迎えに行きたいんだけど、飲んじゃって。来てほしい…」
俺も結城に会いたかった…。
急いで、車で結城の家へ向かう。
小雨の中、ワイパーが速過ぎてちょとうるさい。しかしいつも結城を下ろす辺りを通り過ぎると、心臓がドキドキして、ワイパー音はかき消されてしまった。
いつもみたいにUターンせずに、そのままアクセルを踏むと、結城の家が見えてくる。明かりは消え、小雨が降っているというのに家の前には車のライトでぼんやりと人影が浮かび上がった。
「黒澤くん、こっち~!」
「ちょっ、声大きい…!」
誘導されて車を降りると、待ちきれなかったらしく結城に腕を掴まれた。
「大丈夫だよ!こっち!」
少し酔っているようで顔がほんのり赤い結城に連れられて、選挙事務所の中に入った。電気をつけると、先ほどまで支援者が沢山来ていたのだろう、中はまだパイプ椅子がぎっしり置かれている。
そして、必勝のポスターの中央に、俺が作った大郷漆達磨が置いてあった。
「え…?!」
俺はそれ見て戸惑った。なぜなら、俺が作った達磨の額に、下手くそな丸が描かれていたのだ…!
「俺がせっかく練習して…。芸術的に作った達磨の額に、落書きが…」
「違う違う!落書きじゃないって!」
結城はやや慌てると、俺に筆を差し出した。
「当選したら一緒に目を入れようって約束したろ?でも、先に目を入れちゃったから…」
「それで、三つ目にしたってこと?」
絶対それ、酔っ払いの発想だろう。なんだかおかしくて俺は笑って筆を受け取った。すると、結城は俺の手に自分の手を添える。
「それでは当選を受けまして、目を入れます!」
結城の掛け声に合わせて、一緒に目を入れた。額はインクを入れるように出来てないから、少し滲んで垂れてしまった。
でも嬉しくて、涙が出そうになる。
「おめでとう。本当によかった」
「…ありがとう。黒澤くん、今回当選できたの、黒澤くんのおかげだ。俺こそ、ありがとう」
「それは違うよ。結城さんが頑張ったからだよ。最終日、マラソンまでして…」
「走ろうって思いついたの、黒澤くんが『俺を追いかけろ』って言ったからだよ。あれで気持ちがすごく楽になったし、俺を知ってもらえて、商店街の人も、お年寄りにも投票してもらえた」
「そ、そんな…」
「そうなんだよ!」
何にもできないって思ってたけど、俺も結城の力になれたんだろうか?
もしそうだったら、すごく嬉しい。
嬉しくて、顔が少し熱くなった。すると結城は俺の顔を覗き込む。
「あのさ、今度は、ばんざーいの後、一緒に目を入れよう…?」
今度って、四年後の次の選挙のこと?その時にみんなの前で、一緒に目を入れようってことは…。
結城は出陣式であっさりカミングアウトしたし、元々友人にも話していた。交際するなら隠したくないのだろう。
でも俺は…。
カミングアウトなんて、結城に出会うまで考えたこともなかった。返事できないでいると、結城は一緒に持っていた筆を置いて俺をぎゅっと抱きしめる。
「いや、いい。いいんだ。黒澤くんが嫌なことはしない。言いたくなければ言わなくていい。それは俺の公約だから」
そう言えば、出陣式の時もこうやって抱きしめて無理しなくていいって言ってくれたっけ。
結城の体温が、気持ちが、暖かい。
「嫌っていうか、心の準備がいるっていうか…」
「そっか。じゃあ待ってるから、俺を追いかけてよ。その方がプレッシャーはないよ。俺の実体験」
「あはは…!でも、結城さんを追いかけるのは、すごく大変そうだよ」
「じゃあ伴走する。一緒にいよう。いや、いてください。俺の恋人になってほしい」
俺は結城をじっと見つめた。
一緒に東京に行った帰り…。あれから、俺はこの人の前向きで一生懸命で優しくて、でもたまに子供みたいだったり、プレッシャーで弱音を吐くところ、全部、全部を好きになった。
そして結城隼人の恋人になれる。そんな奇跡が起こって、俺、明日死んだりしないよな…?
「もし明日、俺が起きなかったら、起こしてもらえる…?」
「え…?!黒澤くん、あのさ。ちゃんと意味を確認したいんだけど…。それって、今夜一緒に過ごそうってこと?」
「え…?!ちがうよ…?!」
「違う?!じゃ、なんで?!あと、結構前からなんだけど、黒澤くん俺が告白しても、返事してくれないよね?!始めもなかなか連絡もらえなくてさ。ず~~と不安だったんだけど!?」
……そうだったっけ…?
「そうだ、同意しないままだと、結城さんがセクハラ町長ってことに…」
「いきなり失職させるつもり?」
「まさか…!」
結城は今度こそ、俺を逃さないと両手を頬に添え、包み込んだ。「ん…?」と、笑顔で促されると、もう逃げられない。
「好きです。俺の恋人になってください」
そう言った途端に、結城は満面の笑顔になった。そしてそのまま、ゆっくり顔を近付けて、キスする。
「一緒にいよう。次の、その次の選挙も…、ずっと、ずっと」
「うん…」
ーー東京から一緒に帰ったあの日から、俺たちは走り出していた。
そしてこれからも追いかけたり、時に追いかけられたりしながら、一緒に併走して、生きていこう。
ここ、俺たちが愛する、大郷で。
「七時から投票開始です。黒澤くん、日中は電話番をお願い」
「はい」
「じゃ、今日は一日長いけど、よろしくお願いします~」
投票時間は朝七時から夜八時まで。そこから開票作業にはいるので、今日はかなりの長時間勤務になる。
俺は緊張しながら電話の前に座った。問い合わせの内容は、想定内の内容のみだった。それでも忙しく対応に追われていると、あっという間に投票時間が終わった。
選挙管理委員会の仕事はここからが本番だ。開票作業をするため全員で開票所になっている隣の公民館へ移動する。
午後八時半をすぎると、開票所には投票所から投票箱が集まってきた。投票箱が開けられ、中身が机の中に出される。そこからざっくりと候補者ごとに投票用紙を分けて行く。各候補者の枚数が気になって凝視していると、ぽんと肩を叩かれた。
「黒澤くんはこっち!」
俺はぱっと見判断が付かない票を確認する係になった。別テーブルでどの候補者への投票なのか、無効票なのかを判別していく。
作業をしていても、仕訳が気になって仕方ない。紙量で、大体の数が分かりそうだが…。
「黒澤くん、集中…!」
「あ、はい…!」
開票作業開始から三十分後、一回目の開票速報を出す時間になった。現在の票を集計担当が事務的に報告する。
「二十一時現在の数値、結城候補六百、根本候補六百、大和田候補百です」
この時点で大和田さんは脱落、二人の一騎打ちになった。集計担当は開票所の掲示板に貼りだすため、一回目の会報速報を持って出て行く。きっと掲示板のところには後援会のスタッフがいて、結城も速報を聞いているはず…。
開票率は二十%ほど。まだまだこれからだ…!
ドキドキし過ぎて、胃が痛くなってきた。祈るような気持ちで作業を続けること三十分。集計担当が再度途中経過を報告した。
「二十一時三十分現在の数値、結城候補二千四百、根本候補二千、大和田候補二百です」
開票率は五十%で結城が四百、リードした…!
確認後集計担当が外の掲示板に速報を張り出すと、少しだけざわめきが聞こえてくる。
更に三十分後の二十二時。
「結城候補四千二百、根本候補二千七百、大和田候補三百…」
開票率、八十%。ほぼ決まりだ…!そしてそこから、二十分後。
「結城候補四千九百五十、根本候補三千百、大和田候補四百五十…!」
開票率九十五%。
結城の当選が確実になった…!
やった…、よかった…!
結城の頑張りが認められたことが嬉しい!
この場で飛び跳ねたいくらいだったが、まだ開票作業中だ。ここが選挙事務所なら、おもいっきり万歳できるのに…。
最終的に開票作業が終わったのは二十二時五十分。結城が五千二百、現職の根本町長が三千三百、大和田さんが五百。
結果、結城の圧勝で大郷町長選挙は幕を閉じた。
はやる気持ちを抑えつつ片付けをして、全ての業務が終了する頃には日付が変わっていた。外はまだ少し小雨が降っている。厚い雲に隠れて星は見えない。
仕事を終え役場を出ると急いで車に乗り、結城にお祝いのメッセージをするためスマートフォンを取り出す。すると既に結城から何件かメッセージが来ていた。
『当選しました』
『事務所で達磨に目を入れるので、来てほしい』
『あ、でも仕事か…。ごめん、自分で目、入れちゃう』
メッセージが来ていたのは当選確実がでた二十二時半ごろ。
多分そのあとすぐ、支援者が沢山いる事務所の中で万歳三唱したあと、達磨に目を入れたのだろう。選挙って基本そういう流れだ。
でも俺に一緒に、達磨に目を入れてほしいって言った手前、気を遣ってくれたんだな…?
俺は結城の、その気持ちが嬉しかった。
『おめでとう。あと、お疲れ様!』
本当はもっと、気の利いたメッセージを送りたかったが、シンプルに今、一番思っていることを送信した。すると、すぐに着信がきた。
「黒澤くん、いま大丈夫?」
「うん。今終わったところ」
「そっか。仕事で疲れてるところ、悪いんだけど…。これから俺の家に来られる?」
「え…?」
結城は田舎の空き家を買って住んでいるのだが、その家を選挙事務所にしている。他の支援者も集まっているのに俺が行ったりしたら…。
躊躇すると、結城は笑った。
「もうマスコミとか手伝いの人はみんな帰っていないよ。本当は迎えに行きたいんだけど、飲んじゃって。来てほしい…」
俺も結城に会いたかった…。
急いで、車で結城の家へ向かう。
小雨の中、ワイパーが速過ぎてちょとうるさい。しかしいつも結城を下ろす辺りを通り過ぎると、心臓がドキドキして、ワイパー音はかき消されてしまった。
いつもみたいにUターンせずに、そのままアクセルを踏むと、結城の家が見えてくる。明かりは消え、小雨が降っているというのに家の前には車のライトでぼんやりと人影が浮かび上がった。
「黒澤くん、こっち~!」
「ちょっ、声大きい…!」
誘導されて車を降りると、待ちきれなかったらしく結城に腕を掴まれた。
「大丈夫だよ!こっち!」
少し酔っているようで顔がほんのり赤い結城に連れられて、選挙事務所の中に入った。電気をつけると、先ほどまで支援者が沢山来ていたのだろう、中はまだパイプ椅子がぎっしり置かれている。
そして、必勝のポスターの中央に、俺が作った大郷漆達磨が置いてあった。
「え…?!」
俺はそれ見て戸惑った。なぜなら、俺が作った達磨の額に、下手くそな丸が描かれていたのだ…!
「俺がせっかく練習して…。芸術的に作った達磨の額に、落書きが…」
「違う違う!落書きじゃないって!」
結城はやや慌てると、俺に筆を差し出した。
「当選したら一緒に目を入れようって約束したろ?でも、先に目を入れちゃったから…」
「それで、三つ目にしたってこと?」
絶対それ、酔っ払いの発想だろう。なんだかおかしくて俺は笑って筆を受け取った。すると、結城は俺の手に自分の手を添える。
「それでは当選を受けまして、目を入れます!」
結城の掛け声に合わせて、一緒に目を入れた。額はインクを入れるように出来てないから、少し滲んで垂れてしまった。
でも嬉しくて、涙が出そうになる。
「おめでとう。本当によかった」
「…ありがとう。黒澤くん、今回当選できたの、黒澤くんのおかげだ。俺こそ、ありがとう」
「それは違うよ。結城さんが頑張ったからだよ。最終日、マラソンまでして…」
「走ろうって思いついたの、黒澤くんが『俺を追いかけろ』って言ったからだよ。あれで気持ちがすごく楽になったし、俺を知ってもらえて、商店街の人も、お年寄りにも投票してもらえた」
「そ、そんな…」
「そうなんだよ!」
何にもできないって思ってたけど、俺も結城の力になれたんだろうか?
もしそうだったら、すごく嬉しい。
嬉しくて、顔が少し熱くなった。すると結城は俺の顔を覗き込む。
「あのさ、今度は、ばんざーいの後、一緒に目を入れよう…?」
今度って、四年後の次の選挙のこと?その時にみんなの前で、一緒に目を入れようってことは…。
結城は出陣式であっさりカミングアウトしたし、元々友人にも話していた。交際するなら隠したくないのだろう。
でも俺は…。
カミングアウトなんて、結城に出会うまで考えたこともなかった。返事できないでいると、結城は一緒に持っていた筆を置いて俺をぎゅっと抱きしめる。
「いや、いい。いいんだ。黒澤くんが嫌なことはしない。言いたくなければ言わなくていい。それは俺の公約だから」
そう言えば、出陣式の時もこうやって抱きしめて無理しなくていいって言ってくれたっけ。
結城の体温が、気持ちが、暖かい。
「嫌っていうか、心の準備がいるっていうか…」
「そっか。じゃあ待ってるから、俺を追いかけてよ。その方がプレッシャーはないよ。俺の実体験」
「あはは…!でも、結城さんを追いかけるのは、すごく大変そうだよ」
「じゃあ伴走する。一緒にいよう。いや、いてください。俺の恋人になってほしい」
俺は結城をじっと見つめた。
一緒に東京に行った帰り…。あれから、俺はこの人の前向きで一生懸命で優しくて、でもたまに子供みたいだったり、プレッシャーで弱音を吐くところ、全部、全部を好きになった。
そして結城隼人の恋人になれる。そんな奇跡が起こって、俺、明日死んだりしないよな…?
「もし明日、俺が起きなかったら、起こしてもらえる…?」
「え…?!黒澤くん、あのさ。ちゃんと意味を確認したいんだけど…。それって、今夜一緒に過ごそうってこと?」
「え…?!ちがうよ…?!」
「違う?!じゃ、なんで?!あと、結構前からなんだけど、黒澤くん俺が告白しても、返事してくれないよね?!始めもなかなか連絡もらえなくてさ。ず~~と不安だったんだけど!?」
……そうだったっけ…?
「そうだ、同意しないままだと、結城さんがセクハラ町長ってことに…」
「いきなり失職させるつもり?」
「まさか…!」
結城は今度こそ、俺を逃さないと両手を頬に添え、包み込んだ。「ん…?」と、笑顔で促されると、もう逃げられない。
「好きです。俺の恋人になってください」
そう言った途端に、結城は満面の笑顔になった。そしてそのまま、ゆっくり顔を近付けて、キスする。
「一緒にいよう。次の、その次の選挙も…、ずっと、ずっと」
「うん…」
ーー東京から一緒に帰ったあの日から、俺たちは走り出していた。
そしてこれからも追いかけたり、時に追いかけられたりしながら、一緒に併走して、生きていこう。
ここ、俺たちが愛する、大郷で。

