俺と咲也が付き合って、とうとう一ヶ月を超えた。
すごいじゃん!新記録!
当初の目標まであと半分。そのあとのことはまだ考えてないけど、俺たちは順調に穏やかな日々を重ねている。
「あいつ、またかよ」
舌打ちでもしそうな勢いの友紀の肩を、いつものようにポンポンとたたいてなだめる。
廊下の先では、咲也が一人の女子と腕を絡めて、楽しそうに声を上げていた。
短いスカートに金髪に近い髪色、色白な顔にちょっと不自然な赤いリップが目立つ。
咲也はというと、男子だったら鼻の下を伸ばしそうな胸を押しつけられても、ゆるやかな笑顔を崩していない。
「永桜、いいのかよ」
「いいんだよ。付き合ってる人がいるって周りにちゃんと言ってるらしいし、この一ヶ月、誰からも告白されてないって」
そう言うと、咲也から目をそらして無意識に喉仏をさする。ニカッと笑いかけると、友紀の目線が俺の手を追いかけた。
「なんか無理してねぇ?」
「無理してない。俺なんかお情けで付き合ってもらってるんだし、わがまま言えるわけないだろ」
「わがまま言ってんのはあっちな?教科書貸せだの、消しゴムよこせだの」
友紀がヒートアップしそうな気配に、動悸が強くなる。
なんだろう、もうこれ以上聞きたくない。
俺は咲也を自由にさせるって決めたんだ。束縛なんて絶対したくないし、醜い嫉妬で煩わせたくない。俺の一方的な想いを押しつけるつもりもない。
咲也の時間を奪ってる自覚はある。だから、俺の大好きな笑顔まで奪いたくないんだ。
でも、時々、呼吸がうまくできなくなることがある。
「永桜」
優しくとろけるような声に肩が揺れた。
おずおずと顔を上げると、咲也とぴったりくっついている女子が、不思議そうに俺を見てくる。
「咲也、どうした?」
「あのさ、この子がジャージ忘れちゃったって言うから、貸してくれない?」
友紀が右手で自分の目元を覆った。なにか言いたそうに口がモゴモゴしている。とっさに友紀のワイシャツの裾を引いて、『大丈夫』と合図を送った。
「いいけど、今日もう使ったから汗臭いかも」
咲也がふっと笑う。いつもだったら甘く高鳴る俺の心臓が、今日はやけに静かだった。
「この子に俺の着てもらって、俺は永桜の着るから大丈夫」
「え、ちっちゃいんじゃね?」
「別に平気でしょ」
俺のジャージ着た咲也……。きっと袖も裾も短くてつんつるてんだ。想像するとなんか面白い。
ふははと笑ってロッカーからジャージを取り出すと、咲也の腕に押しつけた。
「永桜、ありがとね」
両手が塞がっている咲也は、俺の頭をなでるかわりに、ふわっと首を傾げる。
目尻を下げた大好きな笑顔。それでも、俺の心は穏やかに凪いだままだった。
すごいじゃん!新記録!
当初の目標まであと半分。そのあとのことはまだ考えてないけど、俺たちは順調に穏やかな日々を重ねている。
「あいつ、またかよ」
舌打ちでもしそうな勢いの友紀の肩を、いつものようにポンポンとたたいてなだめる。
廊下の先では、咲也が一人の女子と腕を絡めて、楽しそうに声を上げていた。
短いスカートに金髪に近い髪色、色白な顔にちょっと不自然な赤いリップが目立つ。
咲也はというと、男子だったら鼻の下を伸ばしそうな胸を押しつけられても、ゆるやかな笑顔を崩していない。
「永桜、いいのかよ」
「いいんだよ。付き合ってる人がいるって周りにちゃんと言ってるらしいし、この一ヶ月、誰からも告白されてないって」
そう言うと、咲也から目をそらして無意識に喉仏をさする。ニカッと笑いかけると、友紀の目線が俺の手を追いかけた。
「なんか無理してねぇ?」
「無理してない。俺なんかお情けで付き合ってもらってるんだし、わがまま言えるわけないだろ」
「わがまま言ってんのはあっちな?教科書貸せだの、消しゴムよこせだの」
友紀がヒートアップしそうな気配に、動悸が強くなる。
なんだろう、もうこれ以上聞きたくない。
俺は咲也を自由にさせるって決めたんだ。束縛なんて絶対したくないし、醜い嫉妬で煩わせたくない。俺の一方的な想いを押しつけるつもりもない。
咲也の時間を奪ってる自覚はある。だから、俺の大好きな笑顔まで奪いたくないんだ。
でも、時々、呼吸がうまくできなくなることがある。
「永桜」
優しくとろけるような声に肩が揺れた。
おずおずと顔を上げると、咲也とぴったりくっついている女子が、不思議そうに俺を見てくる。
「咲也、どうした?」
「あのさ、この子がジャージ忘れちゃったって言うから、貸してくれない?」
友紀が右手で自分の目元を覆った。なにか言いたそうに口がモゴモゴしている。とっさに友紀のワイシャツの裾を引いて、『大丈夫』と合図を送った。
「いいけど、今日もう使ったから汗臭いかも」
咲也がふっと笑う。いつもだったら甘く高鳴る俺の心臓が、今日はやけに静かだった。
「この子に俺の着てもらって、俺は永桜の着るから大丈夫」
「え、ちっちゃいんじゃね?」
「別に平気でしょ」
俺のジャージ着た咲也……。きっと袖も裾も短くてつんつるてんだ。想像するとなんか面白い。
ふははと笑ってロッカーからジャージを取り出すと、咲也の腕に押しつけた。
「永桜、ありがとね」
両手が塞がっている咲也は、俺の頭をなでるかわりに、ふわっと首を傾げる。
目尻を下げた大好きな笑顔。それでも、俺の心は穏やかに凪いだままだった。



