自認オラオラ系男子は漢のなかの漢に認められる

「おい、あいつまた本読んでるよ」

「え? うわっ本当だすっげー分厚い。よく読めるよなぁ……」

「見た目通りって感じ? 気ぃ弱そ」

「はは、確かに」

 春のクラス替えも終わり、新しくなった人間関係。どうにか浮かないようにと日々交わされるあいさつ運動も落ち着いてきた。窓からは新緑が陽の光に照らされ、爽快な香りを立てていた。
 教室の片隅、いつものように辞書のように重たい本を俺は開く。休み時間になるとこうすることが日課になった。

 肩まで伸ばしたパサついた黒髪が風に乗って少し乱れる。読書と引き換えに手に入れた分厚い眼鏡は、下を向くとわずかにずれ落ちる。上まできっちり留めたシャツのボタン、少しだけ窮屈に感じながらも学校指定の紺色ネクタイで彩りを添えるのは割と気に入っていた。

 印刷された文字の並びを上から下へと目でなぞる。指先はすでにページを捲ろうと一枚下に潜り込んでいた。
 ひたすらに文字を追う。周りの声なんて耳に入れない。こうすることが一番誰にも話しかけられずに済む。

 人と馴れ合うのは苦手だ。昔からそうだった。小学生ぐらいの頃は周りとわいわいやってた時期もあったが、高学年になると色だの恋だの男だの女だのそんな話が増えてきた。

「優我って女みたいなしゃべり方だよな〜」

 ある日公園で俺はいつものメンバー数人とゲームをして暇を潰していた。そんなとき、誰だったか手持ち無沙汰のやつが唐突に俺へと矢を放ってきたのだ。

「……え」

「あー確かに、なんか目がきゅるきゅるしてて女顔!」

 俺は目が人より大きいとは思う。いわゆるぱっちり二重だ。3つ離れた大学生の姉にはいつも羨ましがられていた。

「……は?」

「優我ちゃんじゃん」

 一人が言い出すと周りもそれに乗っかる。集団心理というやつか。俺は標的になってしまった。

「優我ちゃん優我ちゃん!」

 バカの集まりだと思った。
 馴れ合いはときに人を狂わせる。毒に浸かるようなものだからだ。

「は? はぁぁぁあ゛?!」

 俺には羞恥が芽生えた。失礼な話だが、女みたいと言われたことが弱さを露呈しているように感じてどうにも受け入れられなかった。

 周りと比べることも阿呆だと今の俺なら分かる。茶化すように言われたその言葉に反発すれば、周りはますます盛り上がる。軽く流して俺は俺なのだと、堂々としていればよかったのに

 そのときの俺には賢い判断が、できなかったのだ。