蛍の季節に、キミはまた会いに来る


朝のホームルームが終わった合図のチャイムが鳴ると、教室内はあっという間に元の騒がしさを取り戻した。

……この、授業と授業の間にある十分間が、とにかく苦痛で仕方ない。

休み時間の過ごし方なんて、トイレに逃げ込むくらいしか知らない。
けれど、転校初日から何度もトイレにこもっていたら「あの転校生、お腹壊してるの?」なんて変な噂が立ちそうでそれもできない。

だから私は、意味もなく鞄の中をごそごそとあさりながら、次の授業のチャイムが鳴るのをただじっと待つことにした。

静かに、波風を立てずに待ちたかったのに……。

「何か忘れ物?」
「え?」

またすぐ隣から声をかけられ、鞄の中を探っていた手がピタリと止まる。

瀬戸キラ。
さっき自己紹介をしてきた、いかにも派手な男子だ。

鞄の中に手を入れたまま動けず、緊張のあまり瞳が小刻みに震えているのが自分でもわかった。
ハラリと垂れてくる横髪で必死に顔を隠しながら、どう答えるのが正解なのかを焦って考えた。

フリーズした古いパソコンが必死に処理を行おうとするみたいに、頭の中がジジジ、ジジジと嫌な音を立てて鳴っている。

「いやほら。さっきからずっと鞄の中あさってるからさ、何か忘れ物でもしたのかなって」

まだ私が何も答えられていないのに、彼は一人で楽しそうにどんどん会話を進めていく。

「転校してきたばかりだし、教科書とか忘れてても先生だって怒んないって。最悪、俺の見せてやるからさ」

……ありがた迷惑、という言葉が頭に浮かぶ。
私は彼の方を振り返ることもできず、ただ横髪をさらに深く前に垂らすようにして、ぎゅっと俯いた。

「あ〜! さては君、俺のこと信用してないな〜?」

……は?