ため息と共に、私のかすかな声が零れ落ちた。
黒崎くんも、私の感極まった表情に満足そうな笑みを浮かべ、無数に宙を舞うホタルの光を目で追っている。
夜の闇にゆらゆらと揺れるホタルの光と同じくらい、柔らかくて温かい黒崎くんの微笑み。
それを見つめているだけで、胸の奥底に押し込めていたはずの『好き』という気持ちが、止めどなく溢れて芽生えていく。
不意に、黒崎くんが私の前にすっと小指を差し出してきた。
私は、差し出された彼の小指と彼の顔を、交互に何度も見上げる。
「もう一回、約束」
「約……束?」
コクンと、黒崎くんが静かに頷いた。
「あの時みたいにさ」
私の心臓がドクンと跳ね上がる。
戸惑いながらも、私は自分の小指を彼の指へとゆっくりと近づけた。
すると黒崎くんは待ちきれないように自分の小指をギュッと絡めてきて、すこしだけ力強くグイッと私を引き寄せた。
「学校……ちゃんと来いよ。俺がいるから」
「……うん!」
私がこぼれるような笑みを浮かべて頷くと、黒崎くんは「約束な」と言って、絡めたお互いの小指を優しく上下に振った。
そのとき、絡め合った私たちの小指の周りを一匹のホタルが優雅に舞い、そっと小指の上に小さな光を灯して止まった。
触れ合えば壊れてしまいそうな小さな命。
私たちはホタルを驚かせないように息を殺し、お互いに顔を見合わせて、言葉にならない愛おしさでクスッと笑い合う。
幼かったあの頃とは違う。
少しだけ大人になった私たちの指切りは、胸が苦しくなるほどドキドキして……今まで味わったことのないような、とびきり幸せな気分で私を満たしていった。



