蛍の季節に、キミはまた会いに来る


開いたドアの向こうから、不思議そうにこちらを覗き込むクラスメイトたちの視線が突き刺さる。

——ここで、何か起こしたら終わる。
そんな予感が、胸を締めつけた。

転校初日から居場所をなくすなんて、絶対に避けたい。

私はドアの横に立つ先生に軽く一礼して、教室の中へ足を踏み入れた。
教室は、思っていたよりも人が少なくて、それなのに、空気はやけに熱い。

向けられる視線のせいだ。
控えめに視線を落とし、黒板の前に立つ。

その瞬間、ハッとした。
そうだ……私だけ、違うんだった。

みんなと同じ白いシャツ。
でも、スカートはグリーンのチェック。

この学校は紺色だ。

転校前に採寸はしたけれど、間に合わなくて、前の学校の制服のままだった。

しかも、丈も違う。
私のは膝上で、みんなは膝下。

それだけで、十分すぎるほど目立っている。
だからせめて、話し方や仕草だけは気をつけないといけない。
誰の記憶にも残らないように。

「東京から転校してきました、古川聖菜(ふるかわせな)です。よろしくお願いします」

余計なことは言わない。
短く、それだけ。
一礼して顔を上げたら、あとは先生の指示に従うだけ。
それが一番、無難にやり過ごせる方法だから。