「初めて見ました。お母さんの若い頃の姿なんて」
「そうかい? 聖菜ちゃんの家にもアルバムくらいあるだろうに」
「あるにはあるんですけど、アルバムを開いてちゃんと見たことはなくて。それに、学生の頃の写真を見るのは初めてです」
私とあまり年齢が変わらないはずの写真の中のお母さんは、この頃どんな青春を送っていたのだろう。
私みたいに、人間関係で悩んで学校に行けなくなったりした時期もあったのだろうか。
――いや、お母さんには黒崎くんのお母さんがいてくれたんだ。
辛いときも、きっとこうして二人で笑い合って乗り越えていけたに違いない。
羨ましいなと思いながら、パラパラとアルバムのページをめくっていたその時。
ふと目に留まったある一枚の写真を見て、私の心臓がドクンと激しく高鳴った。
こ、これ……っ。
「と、豊田さんっ……!」
あまりの衝撃に思わず大きな声を上げてしまい、隣で和んでいた豊田さんは「おやっ」と目を丸くした。
「これ、この子……この女の子、一体誰ですか……っ!?」
「どれどれ?」と、豊田さんが老眼鏡をかけてアルバムを覗き込む。
そして次の瞬間、豊田さんは「アッハッハッハ!」と声を上げて豪快に笑った。
「ああ〜、久しぶりにこんなに笑ったよ。聖菜ちゃん、これは女の子じゃないよ。達也だよ、うちの達也さ」
……え?
く、黒崎くん……!?
頭の中が真っ白になって、フリーズする。
私が見つめていたその写真には、あの幼い頃、川辺で一緒にホタルを見ながら「また見ようね」と約束をしてくれた、あの可愛らしい女の子が写っていたはずだった。
これまでの間、顔の輪郭や細かいパーツは曖昧だったけれど、その面影だけは心の奥にずっと焼き付いていた。
だからこそ、この写真を見た瞬間に「あの時の子だ」と直感したのだ。
それなのに——女の子じゃなかったの?
しかも、それが今のあの黒崎くんだなんて……!?
「昔ね、娘は『女の子が欲しかった』って言っていてね。達也は赤ちゃんの頃からお人形さんみたいに目がクリッとして可愛い顔をしてたもんだから、遊びで髪を結んで可愛い服を着せてたんだよ。まぁ、本人が小学校にあがる頃になって『かっこいい格好がしたい』って大泣きして、それっきりやめさせたんだけどねぇ」
豊田さんは楽しそうに笑いながら懐かしむけれど、私はただ呆然とその写真を見つめたまま、言葉を失っていた。
……じゃあ、あの夜、私に「またホタルを見ようね」って笑いかけてくれたのは……。
原田さんなんかじゃなかった……。



