蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「天気予報では、土曜日あたりがよさそうだけどね」
「…………」
「ホタルでも見て、心を落ち着かせてごらん。今まで見えなかったものが見えるようになるから」

そう言って、豊田さんはどこまでも穏やかな笑みを浮かべた。

ホタル、か……。
……この前みんなで清掃した、あの川辺に行ってみよう。

昔『また見ようね』って約束した女の子が原田さんだったことは、正直すごくショックだったけれど。
でも、あの暗闇に舞う美しい光を、もう一度だけ見てみたい。

あの幻想的な光を見たら……ほんの少しだけでも自分の素直な気持ちを取り戻せるのかな。
原田さんたちの恐怖に怯えて、あの子たち中心に回っていた自分の世界を、棄てることができるのかな。
そうして、もっと強い『新しい私』を見つけることができるのかな……。



行こう、とは思った。

けれど……行ってみたところで、私みたいな人間がすぐに変われるはずなんてあるのだろうか。

また綺麗な風景を見たいという気持ちに嘘はないけれど、それはただ『見てみたい』というだけの自己満足。
今の私のぐちゃぐちゃな心のままあの光を見たって、きっと幸せな気分になんて浸れるはずがない。

今の絶望的な状況をどうにか改善したいと前を向こうとしてみたり、やっぱり私にはそんなの無理だと自分を否定してみたり。

どうして私の心は、こんなにも弱くて、不格好に揺れ動いてしまうんだろう……。