「聖菜! 帰ってきたなら声をかけ……」
玄関を勢いよく駆け抜けて、呼び止めるお父さんの声も無視して、私は2階の自分の部屋へと一直線に駆け込んで鍵をかけた。
そのまま鞄を床に投げ捨て、制服のままベッドへと倒れ込む。
喉の奥から、熱くて止めどない涙が溢れ出した。
泣いたって、もうどうにもならない。
最初から欲を出さなければ、こんな痛い思いをして涙を流さずに済んだはずなのに。
私はバカだ。
何もかも諦める覚悟なんて、最初から中途半端だったんだ。
卒業まであと1年以上あるのに。
この息の詰まる学校で、これからどうやって過ごしていけばいいのだろう……。
もう二度と、誰かに期待したりしない。
人の温もりになんて、絶対に触れたいと思わない。
そして、あの眩しすぎる黒崎くんの優しい笑顔も——もう二度と思い出さない。
私は、ひとりぼっちなんだ。
最初から、そうやって孤独に生きるべき人間だったんだ。
翌日。
原田さんたちの冷たい視線に耐える自信がなくて、私は転校して初めて、学校を休んだ。
お父さんには「頭が痛い」と、慣れない下手な嘘をついて。
あの教室で息を潜めて、怯えながら一日を過ごすよりは、自室のベッドに引きこもっている方が何倍もマシだった。
お父さんが近くの豊田さんのところへ農作業に出かけていって、家が静まり返った頃。
私はふらふらと仏間に向かい、遺影に飾られたお母さんと静かに向き合った。
「……こんな情けない姿、お母さんに見られたら心配させちゃうよね」
そう呟いた拍子に、またぐっと熱いものがこみ上げてきたけれど、私は必死に歯を食いしばって飲み込んだ。



