日曜日当日、私は少し緊張しながら駅へと向かった。
約束の時間にはまだ早い。
けれど、浮立つ気持ちをどうしても抑えられず、いつもより早く家を出てしまっていた。
“デート”——そう言われたことを、素直に喜んでいいのかさえ分からない。
彼はただ、私と二人で出かけることをからかうように“デート”と表現しただけ。
そこに深い意味なんて、きっとない……。
「早かったな」
駅前でひとり悶々と考えていると、背後から急に声をかけられて勢いよく振り返った。
目を丸くして固まる私を見て、黒崎くんが可笑しそうに苦笑する。
「なんだよ。俺、まるで不審者みたいじゃん」
「あ、違っ……!」
慌てて首を振って否定するものの、あまりの焦り様に説得力はなさそうだった。
私服の彼は、いつもの制服姿とはガラリと雰囲気が変わり、どこかぐっと大人びて見えた。
柔らかいベージュのワイドパンツに、シンプルな白Tシャツ。その上に爽やかな薄いブルーのカーディガンを羽織っている。
立ち姿だけで絵になっていて、とても同じ高校生には見えない。
それに比べて、私の格好は大丈夫だろうか。
東京から引っ越してくるときに持ってきた、少し都会的な服。
黒のシックなキャミソールワンピースに、上から羽織ったのは薄手のシアーな長袖シャツ。
足元は大人っぽいストラップサンダルを合わせている。
昨日の夜、あれでもないこれでもないと、家中の洋服を引っ張り出してコーデしたつもりだ。
けれど、こうやって彼と並ぶとどこか背伸びしすぎているような気がして恥ずかしくなり、私は思わず俯いてしまった。
……そのとき、黒崎くんが私の姿をまじまじと見つめていることに気がついた。
「え……それって、大丈夫なの?」
「え……?」
東京っぽい服装が、こののどかな街では浮いてしまって引かれたのだろうか。
あまりの恥ずかしさに、地面にめり込んでしまいたいほど項垂れてしまう。
けれど、彼の口から漏れたのは予想外の言葉だった。
「……シャツが透けてて、肩とか、なんか……目のやり場に困るんだけど。……ちょっとドキッとする」
見ると、黒崎くんの頬が薄く朱に染まっていた。
シアーシャツ越しに見える華奢な肩やラインから慌てて目を泳がせ、気まずそうに首筋を掻いている。
「やばい。……めっちゃ可愛い」
口元を片手で隠しながら、ボソッと呟かれた黒崎くんの低い声。
それがしっかり耳に届いてしまい、今度は私の方が顔を真っ赤にさせて爆発しそうになってしまった。



