蛍の季節に、キミはまた会いに来る


彼は一体、何を言っているの?

デート……?
私、と……?

そんなことして、彼にどんなメリットがあるというのだろう。

「わ、私とデートしたって……何にも面白くないし、楽しくなんてないよ?」
「楽しいよ」

食い気味に返してきた彼が、ニッと無邪気に笑った。

「楽しい」

確信に満ちた声で二度繰り返し、また眩しそうに笑う。

「俺が古川とデートしたいんだから。楽しくなるに決まってんだろ」

……この人は、一体何を根拠にそんな自信満々なことを言っているのだろう。

私とデートして、楽しい?
そんなわけ、あるはずがないのに……。

「日曜日、10時に駅前な」

集合場所をただ「駅前」の一言で済ませてしまうあたりも、どこかのどかなこの街ならではなのかもしれない。
都会だったら「どの線のどの改札前?」と聞き返さなきゃいけない場面だけれど、私が思い当たる『駅前』なんて、この街にはひとつしか存在しない。

私は返す言葉も見つからないまま、コクコクと小さく頷き、口をポカンと開けた間抜けな表情を浮かべることしかできなかった。

……なんで、私は断れないのだろう。

大きな窓から差し込む初夏の日差しよりも眩しい黒崎くんの笑顔に、私はただ、息を呑んで釘付けになってしまっていた。