蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「昼休み、すぐに図書室に来て」

給食の時間になっても登校してこなかった黒崎くんから、突然届いた一通のLINE。
指示された通り、私は昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に図書室へ急いだ。
『図書室』という場所は指定されていたけれど、広い図書室のどこに行けばいいのかまでは書かれていない。

——それなのに、なぜだか私の足は勝手に駆け出していた。

黒崎くんからの連絡を、心のどこかで待ち焦がれていたから……?
ううん、そんなわけがない。

私はただ、今の息が詰まるような現実から逃げ出したくて、光の差す場所へと向かいたかっただけなのかもしれない。
だって彼が立っている場所は、いつだって眩しく光り輝いているから。

重い図書室の扉を開けると、そこは深海のように静まり返っていた。

誰もいない。
最近は、昼休みに図書室を利用する人も少なくなってきたのだろうか。

図書室特有の、少し埃っぽい絨毯が放つ鼻をつくような匂い。
古い紙と乾いたインクの匂い。
その独特な空間は、ざわつく私の心を不思議と落ち着かせ、嫌な現実を束の間だけ忘れさせてくれた。

「……気持ちいいよな」

本棚と本棚の間を抜けながら彼を探していると、ふいに声をかけられた。
私は不思議と驚くこともなく、「そうだね」と短く返し、声のする方へと視線を向ける。

黒崎くんは、本棚の側面に背中を預け、絨毯の上に直接ぺたりと座り込んでいた。
大きな窓から差し込むあたたかな日差しをいっぱいに浴びて、まるで日向ぼっこでもしているかのように私を見上げている。

「お、似合ってんじゃん。その制服」

——そうだった。
今日から、前の学校の制服ではなく、この学校の制服を着て登校していたんだった。

膝丈の紺色のスカート。
学校に馴染めない私の中で、この制服だけが、やっとこの学校に溶け込めた唯一の証。
まだ着慣れない制服姿を面と向かって褒められ、なんだか気恥ずかしくなって、私は落ち着かない手つきでこめかみを掻いた。

「今度の日曜日、予定ないだろ?」
「……う、うん」

逃げ道を塞ぐような彼の誘導尋問に、思わず頷いてしまう。

「デートしよう」

——驚きで、息を呑んで目を見開いた。