蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「あ、いや……なんでもない、です」

そう慌てて答えたものの、私はどうしても彼女から目線を外すことができなかった。
あの夜、暗闇の中で指切りをして約束した女の子は、本当に原田さんなのだろうか。

ホタルを見た場所も合っている。
おじいちゃんと一緒に来ていたという言葉も、私の記憶とぴったり一致している。

……きっと、間違いない。

あの夜の約束を覚えているのは、私だけという可能性だって十分にあるけれど。
でも、もし本当にあの時の子が原田さんなのだとしたら——なんだか胸の奥が、ひどく複雑で重苦しい色に染まっていく。
ずっとどこかで『いつかまたあの子に会えたらいいな』なんて淡い期待を抱いていたけれど、現実はそんなに甘く整ってはくれないらしい。


それから私たちは2時間ほどの清掃作業を無事に終え、今年の初夏もまた、たくさんの綺麗なホタルが見られることをみんなで願った。

「今年はさ! この4人でホタル見に来ようぜ!」

作業の終わりにそう提案した瀬戸くんの瞳は、まるで少年のようにキラキラと眩しく輝いていた。

本当に見に来られたら、きっとすごく楽しいと思う。
だけどその一方で、『私みたいな浮いた存在が、こんな輝いている人たちと一緒に過ごしていいのだろうか』という強い不安が消えてくれない。
やっぱり私は、どうしても周りの目を気にせずにはいられなかった。
清掃を終えた私たちの肌を撫でていく初夏の風は、川の湿気を少しだけ含んでいて、ジメジメと重たく肌にまとわりついていた。