蛍の季節に、キミはまた会いに来る


6月初旬。
ほんの少し夜風がひんやりとしていた頃。
お母さんの仕事の都合で、ほんの数日間だけこの街に住むおじいちゃんの家に遊びに来ていて、明日には東京へ戻らなければいけない……そんな夜のことだった。

その子の顔はまだぼんやりと霞んでいるけれど、肩につくくらいの短めの髪を、ギリギリ二つに結んでいたような記憶がある。

「私……なんか、思い出してきたかも……」

ぽつりと小さく呟いた私に、黒崎くんが「え?」と眉を上げた。

「この場所、私……子どもの頃に、ここで……」
「おーい! 何二人でラブラブ世界に入ってんだよ〜!」

遠くから響いた瀬戸くんの明るい大声に、私は思わず言葉を区切って振り返った。
瀬戸くんの隣には、原田さんが不機嫌さを隠そうともしない大股な足取りでこちらへと近づいてきている。
やばい……。
絶対に何か言われる……っ。
反射的に身構えて体を縮めたけど、原田さんの口から出たのは、そうじゃなかった。

「ここに来ると、やっぱり昔のこと思い出すなぁ」

原田さんが川面を見つめながら、しみじみとした声で呟く。

「あ〜、なんか前にも言ってたっけな。小さい頃、よくここにホタルを見に来てたって」

瀬戸くんの言葉に、原田さんは「うん」と大きく頷いた。

「私さ、おじいちゃんと一緒にホタルを見るのが一番の楽しみだったんだよね。今はもう亡くなっちゃったけど……おじいちゃんが元気だった頃は、毎年6月になると絶対見に来てたの」

——え……?
おじいちゃんと……一緒に見に来ていた……?
じゃあ、もしかして……。
あの満天の星空の下、指切りをして「また会おうね」って約束を交わしたあの女の子って……原田さんなの……?

「古川? ……どうかしたか?」

あまりの衝撃に原田さんを穴が開くほど見つめてしまっていた私に気づき、黒崎くんが不思議そうに眉をひそめた。