「はい! これは古川さんの分ね」
そう言って笑顔で手渡されたのは、まだ折り目のついた新しい軍手だった。
原田さんは一体、どんな気持ちで私にこんな可愛らしい笑顔を向けているのだろう。
私のことがそんなに嫌いなら、いっそのこと徹底的に無視してくれればいいのに。
……もしかして彼女も、周りの目を気にして自分を殺しながら『良い子』を演じているのだろうか?
ううん、それはない。
原田さんはクラスの中心に君臨する、みんなの頂点にいるような人だ。
そんな人が、周りの目なんて気にして自分を偽る必要なんてどこにもないはずだ。
「あれ、達也はまだ来てないのか?」
瀬戸くんが首を傾げながらあたりを見回す。
そう言えば、集合場所のどこを見渡しても、黒崎くんの姿だけが見当たらない。
もうとっくに集合時間は過ぎているというのに。
「あいつ、また寝坊でもしてんのかなぁ?」
……寝坊だろうが、ただの遅刻だろうが、あるいはサボりだろうが。
今の私にとっては、彼がこの場にいない方が何倍も助かるし、心が安らぐ。
結局、私たちは黒崎くんを欠いたまま3人で清掃作業を始めることになった。
川辺に生い茂る雑草の隙間を一つひとつ細かく覗き込み、小さなゴミも見落とさないように丁寧に拾い集めていく。
遠目から見ると透明で綺麗な清流に見えても、実際に足を踏み入れてみると、案外たくさんのゴミが落ちているものだ。
濡れたタバコの吸殻や、風で飛ばされて破れたお菓子のビニール袋。
人が意識せずに捨てていった、あるいは流されてきたゴミばかりだった。
しばらく集中して黙々と作業を続けていると、向こうの堤防の上から、ザッザッと土を蹴る荒い足音が近づいてきた。
私たち3人は同時に作業の手を止め、顔を上げる。
「お! 達也ー!」
息を切らしながら走ってくる黒崎くんの姿に、瀬戸くんが嬉しそうに手を振った。



