蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「そうかな。だって、ホタルを守るための清掃活動なんだもん。東京にいた頃には絶対に体験できなかったことだから」
「いいなぁ、東京かぁ。やっぱりすっげぇ都会なんだろうな。一度でいいから行ってみたいなぁ。ね、可愛い女の子もたくさんいるんでしょ?」

無邪気に目を輝かせる瀬戸くんの言葉に、思わずクスクスと笑みがこぼれる。

「この学校にだって、可愛い子はたくさんいるじゃん」

私がそう言うと、瀬戸くんはニヤッと笑って、また私の顔を人差し指で指さした。

「聖菜ちゃんが一番可愛いけどねぇ」
「……」
「カハッ!」

と、彼は自分で言っておいて変な声を上げて笑った。
どうせいつもの軽い冗談だと分かっているから、私はあえて否定もせず苦笑いで受け流す。

「……そういえば、瀬戸くんは黒崎くんと一緒に来なかったの?」

ふと気になって尋ねると、瀬戸くんはニヤニヤとした表情のまま、片眉をピクッと上げた。

「え? なに? もしかして、あいつのことが気になってんの?」
「い、いやいや! そうじゃなくて……! ただ、すごく仲が良いから、登下校も一緒なのかなって思っただけ」

予想外の突っ込みに動揺してしまい、語尾がどんどん小さく濁っていく。

「まぁ、別にいっつも一緒ってわけじゃないからね。ほんと気分次第っていうかさ。タイミングが合えば一緒に行くし、合わなければ丸一日顔を合わせない日だって普通にあるし」
「……そっか」

男子の距離感って、なんだか不思議だ。
毎日ベタベタと一緒にいなくても、連絡を取り合わなくても、当たり前のように友情が成立している。

一方で、女子の世界はいつだって真逆だ。
登下校も、トイレに行くのも、昼休みもずっと一緒。
好みも一緒、笑うタイミングも一緒。
何から何まで『一緒』でいなければ、途端に不協和音が生まれて、あっという間に除け者にされてしまう。

だから昔の私は、無理をしてまで周りの顔色を窺い、自分を殺して誰かに合わせようとしていた。
学校にいるときの私は、本当の私じゃなかった。

……そんな窮屈な世界で生きてきた私からすると、黒崎くんと瀬戸くんの自由で心地よさそうな関係性が、少しだけ羨ましかった。