蛍の季節に、キミはまた会いに来る


あなたがすることなら、誰もおかしいなんて思わない。
だってあなたは、この学校の中心にいる光みたいな存在だから。
だから……あなたがすることと、私がすることが同じであっちゃいけないの。

「人の目なんか気にしながら生きてたら、時間が勿体なくね? 俺は、絶対そう思うけど」

彼が言葉を重ねている間、私は一度だって顔を上げることができなかった。
部活を終えた運動部の生徒たちが私たちのすぐ横を通り過ぎていくだけで、胃が絞られるような人目が気になって仕方がなかったし、明日教室に広がるであろう凶悪な噂が恐怖でしかなかったから。

絶対、今すれ違ったみんなも、私たちのことを嫌な目で噂しているに決まっている。

「なぁ、何がそんなに怖いわけ? ……何かあったの? もし何かあったんなら、俺にさ……」
「あ、あのっ!」

私は黒崎くんの言葉を遮るように大声を出すと、慌てて肩に下げていた鞄のサイドポケットからスマホを引っ張り出した。

「わ、私のLINEのID……教えますから!」
「……は?」

私が必死の手つきでLINEのコード画面を開いて提示すると、黒崎くんは顔をグッと近づけ、胡散臭そうな顔で眉間にシワを寄せた。

「私に何か用事があるなら、全部LINEで連絡してください! これからは全部、画面の中だけでやり取りしましょう」

……自分でも、完璧な名案だと思った。

学校で直接話さなければ、周りの目につくこともない。
噂だって広がらない。
別に……彼のことが嫌いなわけじゃない。
彼を完全に無視して傷つけることもなく、周りの恐怖に怯えずに会話をするなら、もうこの方法しか残されていない。

けれど——。

「……それは、断る」

一瞬の沈黙のあと、彼はバッサリと、私の必死の提案を切り捨てた。