「お前さ、今から別に何の予定もないだろ?」
「え、わ、私……?」
「お前の目を見て聞いてんのに、他に誰の予定を聞くんだよ」
……ごもっとも。
じゃなくて!
私は恐ろしい殺気を醸し出し始めている原田さんを、恐る恐るチラリと盗み見る。
彼女から立ち上るドロドロとした黒い影が、私だけを呑み込もうと伸びてきているのが目に見えるようだ。
ここは、何が何でも断るしかない。
「わ、私、今日はちょっと……」
「一緒に帰ろうぜ」
——この人は、どうしていつもこうも突拍子のないことを言ってくるのだろう。
今、自分が置かれている状況を少しは理解して言っているの?
あなたには、私に向かって伸びてきているこの不吉な黒い影が見えていないの?
……まあ、実際の影じゃないから見えなくて当然かもしれないけれど、それでも彼女の刃物みたいに鋭い目つきくらいには気づくでしょう!?
とにかく、一刻も早く断らないと大変なことになる。
私がひよって黙っていたら、らちがあかない。
「悪いんだけど、一緒には帰れな……」
「はい! 決まり! 家、同じ方向なんだから途中までは一緒に帰れるだろ」



