「だからさ、変に期待とかしない方がいいと思うよ?」
うわぁ……来たよ。
あからさまに『私の気になる人に近づかないで』って釘を刺してくる人。
少女漫画とかドラマでよく見かける定番のタイプって、現実に本当に存在するんだ。
「このホタルのための清掃だってさ、別に古川さんが参加したくないなら、無理に参加しなくていいんだよ?」
ね! と首を可愛らしく傾けて無邪気な笑顔を見せてくるけれど、その笑顔の裏側にはどれほどドロドロとした黒い泥の塊が隠されているのだろう。
この子にだけは絶対に深く関わっちゃダメだ、と身体中の細胞が一斉に警鐘を鳴らしている。
「古川!」
……なんてタイミングの悪さだろう。
よりによって、彼女から痛烈な警告を受けた直後に声をかけてくるなんて。
ここはもう、聞こえなかったフリをして全速力で逃げるのが正解だ。
私は手に持ったA4の用紙をクシャリと握り潰したまま、身体を縮めるようにして逃げるように踵を返した。
——けれど、踏み出した瞬間に後ろから腕を掴まれ、強引に足止めされる。
「なんで無視すんだよ」
「え、いや、あの……私は別に……っ」
私の背中に突き刺さる、原田さんの殺気立った視線。
私は半ばパニックになりながら、黒崎くんの手を力任せに振り払った。



